壮大なる叙事詩『クラウド アトラス』トム・ハンクス主演映画でダントツ難解作、攻略法!

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Photo by Kitera Dent on Unsplash
館理人
館理人

トム・ハンクス出演映画は面白いもの揃いですが、解釈・賛否がわかれるのがこの『クラウド アトラス』。

攻略法はつまりシンプルにテーマを観る!というレビュー、ご紹介!

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豪華キャストのコスプレ大会!?

【概要】
原作は2004年に発表されたデイヴィッド・ミッチェルの、映画化不可能と言われていた同名小説。手塚治虫の『火の鳥』を思わせるが、アメリカ映画の父、D・W・グリフィス監督の『イントレランス』(1916年)の4つの時代が並行に進む手法をアップデートさせた実験作になっている。

2012年 ドイツ、アメリカ、香港、シンガポール 2時間52分
監督:ラナ&アンディ・ウォシャウスキー、トム・ティクヴァ 出演:トム・ハンクス、ハル・ベリー、スーザン・サランドン、ペ・ドゥナ、ジム・ブロードベント

【レビュー】
 壮大なる叙事詩『クラウド アトラス』。ぜひ感想を訊きたい人がいる。アートにも造詣の深い “世界のキタノ”こと北野武だ。彼は映画表現についてよくこうボヤく。

「写実的な絵から印象派に行くと思ったら、相変わらずやってることは古典的な風景画なの。映画のキュビズムはまだまだ先の話なんだよな」

 本作は北野監督の言う”まだまだ先の話”に挑戦した作品に違いない。

 ラナ&アンディ・ウォシャウスキー姉弟(公開時。のちに姉妹に!)と、トム・ティクヴァが共同で監督。500年間にもわたる6つの物語を解体し、コラージュして再構築、時代も場所も異なる多次元のシチュエーションを、さながらキュビズムの絵画のように同時体験させてくれる。

 特筆すべき点はトム・ハンクス、ハル・ベリー、スーザン・サランドン、ペ・ドゥナといった豪華キャストが設定ごとに転生、驚愕特殊メイクで性別、人種を超えて何役にも変化すること(最高6役!)。もはや本人とは判別できないムチャクチャなコスプレ大会とも言えるが、数世紀にわたって「社会の悪弊、矛盾、理不尽な状況」と闘おうとする者たちのエピソードが幾重にも紡がれ、筋の通った世界観を成していく。

 全編、その編集の妙に目を奪われるが、映画が打ち出すメッセージはシンプルだ。未来は変えられる──。「そんなの楽観主義じゃね、甘くね?」と鼻で笑われるかもしれないが、『マトリックス』(1999年)で映像革命を果たしたときには想像だにしなかったではないか。まさか兄貴のラリー・ウォシャウスキーが性転換に成功して“ラナ”になるなんて。行動あるのみ。そうすれば未来は(きっと)変えられるのだ。賛否分かれるこの映画自体の評価も未来が決めてくれることだろう。

館理人
館理人

トム・ティクヴァ監督作では『王様のためのホノグラム』などがあります。

 どの俳優が何の役を演じていたのかエンドクレジットで明かされるのだが、ここからまず観て、各エピソードに当たるのもいい。既成の方法論ではない映画である。楽しみ方だって自由でいいと思う。

轟

週刊SPA!2013年7月16日号掲載記事を改訂!