『彼は秘密の女ともだち』フランス発、男女超えのアクロバティック・ラブコメ!

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Photo by Andrew Tanglao on Unsplash
館理人
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フランスラブコメ、フランソワ・オゾン監督作です! レビューをどうぞ!

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自分自身の覚醒へ!

【概要】

推理作家ルース・レンデルの短編「女ともだち」に材を得たセクシャルマイノリティーをめぐる寓話。自らゲイであることを公表し、たびたび自作のテーマにもしてきたフランソワ・オゾン監督のテイストが全編にちりばめられている。ちなみに、映画館の中でのシーンで、隣に座ってヴィルジニアに痴漢をするのはオゾン監督自身!

2014年 フランス 1時間47分

【レビュー】

 さらっと読むと、「ん?」と引っかかる邦題が付けてある。『彼は秘密の女ともだち』。「彼」なのに「女ともだち」とは……これ如何に!?

 要は、「彼」が「異性装者」だったのだ。名前はダヴィッド。若くして妻ローラを亡くし、忘れ形見の赤ん坊をかかえている。ローラの大親友であったクレール(アナイス・ドゥムースティエ)は、その様子が気になって家を訪ね、目撃してしまう。ダヴィッドが亡き妻のブラウスを身に纏い、我が子をあやし、ミルクを飲ませているところを。

「彼」はゲイではない。ただ単に、「女性の服を着た自分」が一番、自分らしいのだという。当然、クレールは驚き戸惑うが、やがて「彼」を秘密の女友達“ヴィルジニア”として認め、愛でていくことになる。

 ダヴィッド/ヴィルジニアに扮したのは、フランスを代表する演技派ロマン・デュリス。華奢で美脚の持ち主だが、ヒゲ剃りの跡は青々しく、アゴも角張っている。が、それはあえて男っぽさを残したまま女性化させたフランソワ・オゾン監督の企み。

館理人
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ロマン・デュリスの主演作に『ニューヨークの巴里夫』など、近作ではリドリー・スコット監督作『ゲティ家の身代金』にも出演しています。

館理人
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フランソワ・オゾン監督作にはサスペンス映画『危険なプロット』など!

「私が本作で目指すのは、映画を見終わったすべての男性がストッキングや化粧品、ドレスを買いに走ること。妻のためではなく、自分自身のために」と映画の企画書に記したとおり、世の男たちの背中を押し、「ひょっとして、オレにもできるかも」と覚醒するのを待っているのだ。

 一方クレールは、夫に嘘をつきながらヴィルジニアとの密会を繰り返し、だんだんと、女ともだち以上の気持ちを持ってしまう。一見めちゃくちゃな物語だが、男/女という強固な属性を超えていくアナーキーさが実に清々しい。

 つまりは、性の同一性とはあらかじめ決められたものではなく、相手との関係性次第、という至極まっとうな風通しの良いメッセージ。観る人によって解釈が変わる、“含み”を持たせたオープンエンドもいい。アクロバティックなラブコメとしても楽しめます。

(轟夕起夫)

轟

週刊SPA!2016年2月23日号掲載記事を改訂!