フランス映画のレビューです。母娘の物語!
カトリーヌ・ドヌーヴの貫禄が圧巻!
【概要】
現代版「アリとキリギリス」とも言うべき寓話。監督&脚本は女性画家セラフィーヌ・ルイの半生を描き、セザール賞最優秀作品賞ほか7冠に輝いた『セラフィーヌの庭』(2008年)のマルタン・プロボォ。
自身が助産婦に命を救ってもらった感謝の気持ちから、本作をつくるに至った。
2017年 フランス 1時間57分 出演:カトリーヌ・フロとカトリーヌ・ドヌーヴ
【レビュー】
この『ルージュの手紙』というフランス映画、公開前に、人の作品を滅多に褒めない樹木希林さんによって激賞されていた。主演は樹木さんと同じ1943年生まれの大スター、カトリーヌ・ドヌーヴ。来日した彼女と対談し、「話のわかる映画はよくあるんですけど、気持ちがわかる映画はあまりない。これは、ベアトリスというお母さんの気持ちがすごくわかった」と思いの丈を直接伝えたのであった。
カトリーヌ・ドヌーヴは1960年代の『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』などの主演映画の大ヒットで世界的スターに。近年では是枝裕和監督作『真実』(2019年)に主演しています。
ドヌーヴ演じるベアトリスとは、樹木さんを感動させるほど我が道を行く、肝が座った豪傑キャラなのだ。タバコを吸い、ヒョウ柄の派手な服を着こなし、ステーキ好きでワインに目がなく、おまけにギャンブル狂い。
つまり自由奔放で、勝手気ままに生きてきた男前な女性だ。が、脳腫瘍を患い、医者に手術が必要と言われ、後先短いことを知って30年ぶりに娘に連絡を取る。
その娘の名はクレールで、シングルマザー。女手ひとつで医大生の息子を育て上げ、助産婦をしながらパリ郊外で地道に暮らしている。見事に対照的な「母と娘の物語」が展開するのだが、実は血は繋がっておらず、継母と娘の関係であるところがポイント。正反対の価値観を持つ2人が時を超えて再会し、互いに化学変化を起こしていく。
娘役のカトリーヌ・フロは、ドヌーヴよりも一世代若いフランスの国民的スターで、役に“化ける”のが上手い成りきり型の芝居巧者だ。だからこれは「ダブル主演、2大女優の初共演作」と紹介すべきなのだが、しかしやはり、ドヌーヴは格が違う。
カトリーヌ・フロの主演作に、『大統領の料理人』『偉大なるマルグリット』などがあります。
世界の名だたる巨匠監督と組んできた国際的な女優であり、また恋多き女性としても話題を振り撒いてきた。現在は見た目もずいぶんと貫禄がついたけど、オカンではなく相変わらずマダム然としていて、ものすごい現役感。カトリーヌ・ドヌーヴという、唯一無二の“伝説的存在”があってこそ成立した作品なのである!
(轟夕起夫)
週刊SPA!2018年5月29日号掲載記事を改訂!