大人計画所属、井口昇監督作です。
『卍』は、国内最大級のインディーズ映画配信サイト、DOKUSO映画館(ドクソーエイガカン)で見ることができます。(2020年7月現在)
詳しくはこちらで紹介しています。
レビューをどうぞ〜
原作のどうかしてるセリフの応酬が下っ腹に響く快作!
「あかん……あかんてぇ〜」
早くもこの境地に辿りついてしまったか。
井口昇監督が、谷崎潤一郎の『卍』を映画化した。
当然、数あるバージョンの中では若尾文子&岸田今日子の組合せ、増村保造の監督作がとてつもなく(狂っていて)最高なのだが、井口昇は堂々それに挑戦、リスペクトしつつ、なおかつ“自分汁”を画面に付着させたのは大した技である(音楽が増村映画の常連・山内正ぽく、「完」の字が“大映”しているのもマニアックなこだわり)。
こちらは増村保造監督作。Amazonプライムビデオで配信されています(2020年7月現在)。
そもそも原作にある、性を超越した者同士のインモラルな関係は、『クルシメさん』から『おいら女蛮』(こちらは監督・鈴木則文テイストを換骨奪胎!)まで井口昇の作風の“心棒”にあるものだ。
弁護士の夫を持ち、恵まれた生活を送る園子と、奔放で妖艶な光子のドロドロ愛(演ずる秋桜子と不二子、イイです)。やがてそれはトライアングル、いや“卍くずし”な関係になっていき、映画のジャンル自体も笑いとエロスが入り組んで、卍な様相を呈していく(荒川良々、野村宏伸というキャストを、増村版の両エース・川津祐介、船越英二と比べるのは、まあ酷だろう)。
そして口唇的な快楽、ひいては吸血行為にこだわるのが井口映画。毎度のとおり、直接的な性交シーンはなくとも何とも淫靡な匂いを漂わせ、さらに原作の“どうかしてるセリフ”の応酬を響かせて、耳元から攻めてくる。で、この言葉責めの映画を観ながら我々は、下っ腹のあたりのムズムズを感じてこう呟くことになるのである。
「あかん……あかんてぇ〜」と。
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