『RAW 少女のめざめ』(1916年)はジュリア・デュクルノー監督作、出演はギャランス・マリリエ、他
ショッキングな題材にもかかわらずカンヌ国際映画祭で批評家連盟賞を受賞
フランスの名門映画学校「ラ・フェミス」の出身であるジュリア・デュクルノーの長編デビュー作。主役で怪演しているギャランス・マリリエは、デュクルノーの短編『Junior』でも(18世紀の背徳作家マルキ・ド・サドの小説で有名な)“ジュスティーヌ”という名のヒロインを託されている。
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大変ヤバい映画だ。『RAW 少女のめざめ』。
RAWとはフランス語で「ナマの」という意味を持つ。そして文字通り、親の方針でベジタリアンだった16歳の少女は突如、生肉を食すことに目覚める。それも人間の肉に!
ここで直ちに「あ、そういうホラー映画ね。もういいわ」と見切ってしまうのは実にもったいない。
なぜなのかを手短に列挙すると、まず、ショッキングな題材にもかかわらずカンヌ国際映画祭で批評家連盟賞を受賞していること。
しかも監督が公開当時32歳の若さで、かのデヴィッド・クローネンバーグの影響を隠さない、ジュリア・デュクルノーという才気溢れるフランス人女性である点。
つまりは「大変ヤバい」とは、「アブない」だけでなく「スゴい」の意味もまたそこに含まれているのだ。
さて、内容のほうに話を戻す。ヒロインの名はジュスティーヌ。頭が良く、飛び級で両親の母校である獣医科大学に入るところから物語は始まる。
寮で暮らすため初めて親元を離れ、不安な心持ち。救いなのは一年先に入学している姉の存在だったのだが、その姉も加わって、上級生からのムチャクチャな“洗礼”に次々と遭い、ジュスティーヌは否応なく変貌を強いられてゆく。
ジワジワと、観ているコチラの精神をもいたぶるような描写が連打されていき、気圧される。
そうして青春期の真っ只中、人生のキャリア的にも性的にも無垢なジュスティーヌは、激しく悩み、揺れ動く。
指針となるのは姉だ。“先輩”としていろいろ教える立場になるのだが、ブラジリアンワックスで下半身のムダ毛を処理してやるシーンが、まさかジュスティーヌの「人肉食への覚醒」に繋がるとは! この意表をつく流れには、本当にブッたまげた。
ちなみにデュクルノー監督にも実際に姉がおり、その関係性が反映されているとのこと。本作は「姉妹映画」としても「青春映画」としても、斬新にして“大変ヤバい作品”なのであった。
週刊SPA!2018年7月17日号掲載記事を改訂!