新世代の詩人・最果タヒの同名詩集を“触媒”に映画化!東京のぼっちを描く『夜空はいつでも最高密度の青色だ』

スポンサーリンク
館理人
館理人

『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017年)は石井裕也監督作、出演は石橋静河、池松壮亮、松田龍平、市川実日子、ほか。

館理人
館理人

レビューをどうぞ!

Photo by Jezael Melgoza on Unsplash
スポンサーリンク

ひとりぼっちは「どうでもいい奇跡」のもとに出会い、ふたりぼっちになる

現代詩集としては異例の累計31000部(2017年現在)を売り上げた「夜空はいつでも最高密度の青色だ」が原作。

館理人
館理人

「夜空はいつでも最高密度の青色だ」は全43篇の詩が収録されています。

第9回TAMA映画賞にて最優秀作品賞、最優秀男優賞、最優秀新進女優賞の三冠に輝いた。

ちなみに好演した石橋静河は、原田美枝子と石橋凌の次女。エンドロールに流れるThe Mirrazの「NEW WORLD」もピッタリ! 

館理人
館理人

ザ・ミイラズは日本の3人編成のロックバンドです!

   ・   ・   ・

 新世代の詩人・最果タヒの同名詩集を“触媒”にした『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』。

 クレジットには「原作」とあるが、というよりもその粒だった言葉たちからインスピレーションを受け、「独自に作品世界を構築した」と言ったほうが近いだろう。

 東京。「ひとりぼっち」と「ひとりぼっち」がいかにして、「2人ぼっち」になるかを描いた映画だ。

 昼は看護師、夜はガールズバーで働く美香。慎二は工事現場の日雇い労働者で左目がほとんど見えない。

 二人は偶然、居酒屋で客同士、ガールズバーでは店員と客として会ってはいたものの、“二人きり”で言葉を交わすのは渋谷の路上である。

美香「でもさ、何でこんな何回も会うんだろうね。東京には1000万人も人がいるのに。どうでもいい奇跡だね」

慎二「それは分かんないけど、人身事故で電車が止まっちゃって、それで仕方なく歩いて帰っていたんだけど」

美香「また死んだんだ、誰か」

 何気ない会話だが、ここにこの作品のエッセンスが集約されている。

 つまり、日常的な“死の影”と、“どうでもいい奇跡”によって生かされていることの不思議が映画の隅々に散りばめられているのだ。

 慎二は「嫌な予感がする」が口グセで、不安になるとエキセントリックなまでに饒舌になってしまう。

 一方、美香はネガティブさが反転して、毒気の強い言葉を吐きがちな性格。

 そんな、付き合うには面倒臭く、人生こじらせた、しかし(我々の分身かもしれない)2人をリアルに、池松壮亮と石橋静河が肉体化してみせる。

 最果タヒはくだんの詩集のあとがきに「レンズのような詩が書きたい。その人自身の中にある感情や、物語を少しだけ違う色に、見せるような、そういうものが書きたい」と記しているのだが、(『川の底からこんにちは』や『舟を編む』)の石井裕也監督は映画でそれを試みた。

館理人
館理人

『川の底からこんにちは』は、家業のしじみ工場を継ぐ元OLを満島ひかりが演じています。

館理人
館理人

『舟を編む』は三浦しおんの小説を映画化、辞書編集部の編集員を松田龍平が演じています。

 果敢に、自らの内面をむき出しにして……新境地の一本!

轟

週刊SPA!2017年11月21日発売号掲載記事を改訂!