古谷実の問題作を映画化!平然と殺し、平然と女を襲う。森田剛の底なしの狂気に震える『ヒメアノ〜ル』

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Photo by Joanna Kosinska on Unsplash
館理人
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V6の森田剛が初単独主演した映画『ヒメアノ〜ル』(2016年)のご紹介!

共演は濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ、他。

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レビューをどうぞ!

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捕食者の底なしの狂気と、実は被食者でもある哀しみが複雑怪奇なメロディーを奏でる

タイトルの“ヒメアノ~ル”とは猛禽類のエサとなる小トカゲのこと、転じて強者の餌となる弱者を意味する。

吉田恵輔監督は、ジャニーズ俳優と組んで、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(2013年)で安田章大(関ジャニ∞)、『銀の匙 Silver Spoon』(2014年)では中島健人(Sexy Zone)を大化けさせた。今回は森田剛で哀しきモンスターを造形してみせた。

館理人
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『ばしゃ馬さんとビッグマウス』はシナリオライターを目指す男女のラブコメ。安田章大と麻生久美子の共演です。

館理人
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北海道の農業高校が舞台の『銀の匙 Silver Spoon』は、荒川弘の漫画が原作。

   ・   ・   ・

 古谷実の問題作、漫画「ヒメアノ〜ル」の映画化である。

 が、これはほとんど“オリジナル”と言っていい出来で、施されたアレンジが成功している。

 メインの登場人物の名前は、原作と同じく「岡田」と「森田」。この2人が一字違いであることの意味を(脚本も手がけた)吉田恵輔監督は、映画のなかでより際立たせているのだ。

 運命のいたずらで高校時代の同級生「岡田」に再会した「森田」は、彼に言う。
「俺もお前も人生終わってんだよ。なんも持ってないヤツが底辺から抜け出すことなんかないんだぜ」

 浮世の底を見てしまった男のつぶやき。「森田」の正体はサイコパスだ。

 一方の「岡田」は日々、バイト生活を送る平凡な男。しかし“人生終わっていた”はずの「岡田」は、「森田」が狙っていた女の子と付き合い、初めてのセックスまで経験してしまう。

 そのとき、「森田」がどこにいるかはあえて書かない。これから観る方のために。

 ただ、ひとつだけ明かすならば、画面左隅にHEMEANOLEとタイトルが浮かび上がる。物語が始まって約40分過ぎ。背筋にゾワゾワっと戦慄が走る。それまで「岡田」を包んでいたラブコメ仕様は終了、ここからは「森田」の時間、超ダークでサイコなタッチが映画の主軸となるのである。

 ほんの一字、紙一重の違いで人生が分かれた2人。

 「岡田」役の濱田岳を筆頭に、バイト先のキモい先輩のムロツヨシや、受難のヒロインを体当たりで演じた佐津川愛美も巧いが、【R15+】指定表現を受けて立ったV6の森田剛がスゴい!

館理人
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濱田岳の主演作として、テレビドラマ『釣りバカ日誌〜新入社員 浜崎伝助〜』があります。

館理人
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ムロツヨシの主演作に、テレビドラマ『Iターン』があります。広告マンを演じてます。

館理人
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佐津川愛美の出演作に、「劇団、本谷有希子」の舞台劇を吉田大八監督が映画化した『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』など。

 平然と殺し、平然と女を犯す。捕食者の底なしの狂気と、実は被食者でもある哀しみが、複雑怪奇なメロディーを奏でる。

 人間的な感情を失くした「森田」だが、吉田監督は彼がまだ心を持っていた頃、「岡田」とのあるエピソードを絶妙なタイミングで描く。そうして、“感情のシャトルループ体験”を味わせるのであった。

轟

週刊SPA!2016年11月1日発売号掲載記事を改訂!