スエーデンの映画です!
ユーモアたっぷり『さよなら、人類』のご紹介、レビューでどうぞ!
この世には“アンダーソン”という名を持つ3大監督がおりまして、断トツでヘンな監督は…
『散歩する惑星』『愛おしき隣人』に続くロイ・アンダーソン監督のリビング・トリロジー、人間について考察した3部作の最終章。
『散歩する惑星』は、次々と巻き起こる不条理な出来事を綴るブラックコメディ。
『愛おしき隣人』は、とあるバーに集う人々の悲喜こもごもなコメディ。
この『さよなら、人類』でアンダーソン作品初の“本格全米公開”を実現させた立役者はなんと『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督と、『ブラック・スワン』のアロノフスキー監督!
『バードマン〜』はアカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞の受賞ふくめ、全9部門でノミネートされた話題作。落ち目の俳優を描きます。
『ブラック・スワン』もまた、アカデミー賞で5部門にノミネートされたサイコホラー映画。ナタリー・ポートマンが主演女優賞を受賞しました。
・ ・ ・
この世には“アンダーソン”という名を持つ3大監督がおりまして。
年齢順に紹介すると1970年生まれのポール・トーマス・アンダーソン、1969年生まれのウェス・アンダーソン、そして1943年生まれのロイ・アンダーソンとなる。
作風自体に共通点はないが、どちらかと言えば寡作なほうで、それぞれオリジナルのスタイルを持ち、好きな人は熱狂的に語り、ダメな人は徹底的にコキ下ろす、真っ二つに評価が分かれる映画作家たちだ。
さて、アメリカ出身の前者2人に比べ、ロイ・アンダーソンが一番無名だろう。
いきなり“スウェーデンの鬼才”と書かれても、いまひとつピンとこないのは当然だ。
そもそも“スウェーデンの正統”が何なのか、わからないからである。前者2人はハリウッド映画との比較で、一応異質さがわかる。
だから、こう述べてみよう。
3大アンダーソン中、断トツでヘンな監督。
まあこれも、残り2人のアンダーソン作品に精通していることが前提だが、ここで「アンダーソン、アンダーソンってお前、うるせえよ!」と感じた方はアカデミー賞作品賞の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を抑え、ベネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得した『さよなら、人類』を即、観てください。
が! そう書くと、今度は『バードマン〜』との比較が必要になってしまうではないか。面倒くさい。人間ってヤツは実に厄介だ。そんな難儀な人間が、生まれてから死ぬまでのスケッチ集がこの『さよなら、人類』なのだが。
それは、コントの連なりであり、オフビートでシュールでブラックな風刺劇でもあり。
人生の断片が39篇。基本、固定カメラによるワンシーンワンカットの長回しで、アナログにこだわり、マットペイント(背景画)やミニチュアを用いてワン&オンリーな世界を構築している。
撮影に4年もかけて。
酔狂な方は「3大アンダーソン中、断トツでヘンな監督」説を確認してみては!
週刊SPA!2016年3月8日掲載記事を改訂!