メリル・ストリープがロッカーに扮した『幸せをつかむ歌』をレビューにてご紹介です!
ロケンロール!し続ける女一代記。メリルのバケモノ性が全開!
メリルがクライマックスで披露するのは「My Love Will Not Let You Down」。
彼女の唄はどれも素晴らしいが、ドビー・グレイの「Drift Away」も聴きもの。
監督のジョナサン・デミは言わずもがな、『ストップ・メイキング・センス』『ニール・ヤング/ハート・オブ・ゴールド〜孤独の旅路〜』など、音楽物でも有名である。
『ストップ・メイキング・センス』はトーキング・ヘッズのドキュメンタリー。
『ニール・ヤング/ハート・オブ・ゴールド〜孤独の旅路〜』はニール・ヤングのドキュメンタリーです。
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すでに周知の事実なのはわかっているが、でも書かずにはいられない。
メリル・ストリープはバケモノだ!
メリル・ストリープはアカデミー賞に21回!(2020年現在)ノミネートされてます。これは俳優でぶっちぎりの最多!
いやもちろん、その容姿を指しているのではなく、「すごい能力を持っている人」の意味でだが。彼女がロックバンドのボーカル兼ギタリストを演じた『幸せをつかむ歌』を観ると一層のこと、“バケモノ”感を強くする。
映画の設定的には、ロサンゼルス郊外の小さなライブハウスがバンドのホームグラウンド。ま、早い話が場末のロックシンガーで、昼はスーパーのレジ打ちで何とか糊口をしのいでいる。
じゃあバンドもしょぼいのかと言えば、リック・スプリングフィールドにバーニー・ウォーレル(本作出演後に逝去)といった名うてのミュージシャンたちがバックを務めており、メリル・ストリープ自身もニール・ヤングらのもとでギターを練習、ボイストレーニングで野太い歌声も体得し、完璧に役を仕上げてきているのであった。
おまけに、自分の夢のために家族を捨て、“母親失格”の烙印を押されているキャラクターも背負っていて、実の娘であるメイミー・ガマーと親子役で共演。
これもう、「メリル・ストリープ劇場」といった作りに。そうなると、名演技の押し出しの強さが懸念されるところだが、そこは監督ジョナサン・デミがしっかり舵取りを。
鼻つまみ者が家族に帰還する物語『レイチェルの結婚』の応用をここで展開、彼女のワンマンショーにはしていない。
ジョナサン・デミ監督作『レイチェルの結婚』では、姉の結婚式に出席する薬物治療中の女性をアン・ハサウェイが演じています。
決して褒められるような親ではなかったが、全編内田裕也ばりに「ロケンロール!」し続ける女の一代記。
そんな役柄に、還暦越えの偉大なるアクトレスは魂を吹き込んでみせた。
ラストはデミ監督、彼女の“バケモノ”性を全開にし、ブルース・スプリングスティーンの「あの曲」を唄わせ、巧みなリアクション・ショットで泣かせる!
演出と歌の力、メリルの演技が一体となり、こちらに押し寄せてくるのだ。
週刊SPA!2016年8月16日掲載記事を改訂!
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