ロードムービーもいろいろあります。
例えば『イージー・ライダー』みたいなアウトローのさすらいもの。
女子プロレスラーが各地を巡る『カリフォルニア・ドールズ』みたいな、どさまわりもの。
そんな中の変り種、家族全員で道をゆくのが『リトル・ミス・サンシャイン』。アカデミー賞で4部門にノミネート、2部門で受賞した映画です。
監督はジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス、出演はトニ・コレット、他。2006年の作品です。レビューをどうぞ!
「本当の負け犬は、負けることを恐れて何も挑戦しないヤツらだ」
ポンコツの黄色いフォルクスワーゲンは本当の家族の“ありよう”を代弁する
崩壊寸前の負け組家族の再生の道のりを、シニカルな笑いと感動とで綴るハートフルなドラマ。
第79回アカデミー賞助演男優賞に輝いた祖父役アラン・アーキン、助演女優賞にノミネートされた末っ子役アビゲイル・ブレスリンほか、役者陣が皆いい。監督は、PVやCMを手がけてきた映像ディレクター夫妻。
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インディーズ作品としては異例の全米スマッシュヒットを記録、先のアカデミー賞でも4部門にノミネートされ、惜しくも作品賞は逃したものの、脚本賞と助演男優賞を獲得したロードムービーだ。
まず何がいいって、その移動手段、おんぼろだが目にも鮮やかな黄色のフォルクスワーゲンのミニバス。これが本作『リトル・ミス・サンシャイン』 のキービジュアルである。つまり、移動するホームドラマ。黄色の外壁で囲まれたささやかな空間は、登場人物たちの家の暗喩なのだ。
すっかり心がバラバラになっている家族6人を乗せたミニバスは、末っ子が出場する“ミスコン会場”を目指す。
が、クラッチがイカれていて“押しがけ”しないとうまくエンジンがかからない。そこで全員で力を合わせて押して、飛び乗ることに。
劇中、何度も繰り返されるこのシークエンス、「壊れかけのミニバス」が機能不全に陥った家族を象徴しているのは明白だが、それ以上に、必死に前に押すしかない、その姿が家族というものの“ありよう”をわかりやく描き出し、じんわり胸を打つ。
ちなみに脚本家のマイケル・アーントは、かのカリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガーの発言「この世で一番嫌いなものがあるとすれば、それは“負け犬”だ」に反発を覚え、このストーリーを生みだした。
反撃の一手がイカしてる。バスが“突撃”するミスコンの開催地はカリフォルニア。末っ子に祖父は言う。「本当の負け犬は、負けることを恐れて何も挑戦しないヤツらだ」。
これが本作の“返答”である。
週刊SPA!2007年6月5日号掲載記事を改訂!