ヴィム・ヴェンダース監督が撮った音楽バンドのドキュメンタリー映画です。
バンドは、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ。シニアなメンバーばかりのバンドで、みんな人生を満喫しているのが伝わって来るのが素敵。
じっくり観ても、聴いてるだけでもイイので、パーティなんかのBGVのラインナップにも!
データ
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース
出演:ライ・クーダ、ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ
気持ちがらく〜になる音楽ドキュメンタリー
(文・轟夕起夫)
進むべき道を見失い、なにか足踏みしているような映画ばかり撮っていたヴィム・ヴェンダース。
こちら、2000年の雑誌レビューの復刻となりますので、ヴィム・ヴェンダースのその頃のことが語られております!
ヴィム・エンダースは、ドイツの監督です。
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』は1999年(ドイツ、アメリカ、フランス、キューバ)の作品。出演はイブライム・フェレール、ライ・クーダ、他。
だが“停滞”も旅の一要素である。「日」が昇りさえすればいつかは新たな地平へと「立」つことができる。
というわけで「音」の人、ヴェンダースはゆっくりとだがその歩をまた進め始めた。キッカケとなったのは1枚のCDだ。ライ・クーダがプロデュースし、1997年にグラミー賞を得た『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』。
アメリカの(もはや説明不要の)いぶし銀のギタリストと、キューバの(なかば忘れかけられていた)ベテラン・ミュージシャンたちとの幸福な出会いを記録したこの「音」のアルバムは、ヴェンダースに身軽なビデオ&手持ちカメラを持たせ、彼を情熱の「日」が昇る土地キューバへと「立」たせたのだった。
根本敬的にいうと「イイ顔してる」、みうらじゅん的には「イイ味出してる」、そしてヴェンダース的にいうならば「イイ音、奏でまくっている」ジジイ、いや素晴らしき老音楽家たち。
彼らへのインタビューとスタジオ収録風景、アムステルダム、NYでの怒濤のライブは我々を、すっかり「音」の虜にする。と同時にこれは、連想の旅のBGVとしてもじつに最適な1本だろう。
熱狂した聴衆から手渡されたキューバ国旗が、カーネギーホールに鮮やかに広がるカッコよさは、バカ法案を通し、強制しているようなこの国とは無縁だろうナとか、美空ひばりの『お祭りマンボ』はたしか、ジャニーズの忍者も唄っていたよナとか、ライ・クーダと息子が乗っているサイドカーは『さすらい』(1976年)にも登場した魅惑の乗り物だったナとか、連想はもうとりとめもなく続くのだが……とまあ今回は、ヴェンダースの“旅”を久々に満喫した。
『さすらい』はモノクロ映像のロードムービーです!
キネマ旬報2000年3月下旬号掲載記事を改訂!