『ツイてない男』(2007年)は監督:キット・ライアン、出演:スティーブン・ドーフ、他
レビューをどうぞ!
ドリフの『8時だョ!全員集合』的に言えば、「志村ぁ〜、後ろ後ろ!」な展開が続出!
モスクワのペントハウスに潜入、黄金の十字架を頂きにきたプロの盗っ人。ところがそこは、猟奇的な殺人鬼の棲む場所だった!
撮影のブライアン・ロフタスは、グリム童話の『赤頭巾ちゃん』をモチーフにしたダーク・ファンタジー『狼の血族』(1985)の名手。
デビュー作となるキット・ライアン監督、もう好き放題やってます。
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スティーブン・ドーフという男がいる。とまあ、何もこんなにかしこまって紹介する必要もないのだが、彼、最近「あの人は今!?」状態に陥っていないか。
次作主演作の刑務所もの『プリズン・サバイブ』も、本国アメリカでひっそりと公開、日本では劇場公開されずにDVDスルーとなった。
一癖ある作品を選ぶ、いい俳優なのに。『バック・ビート』でビートルズの初期メンバー、スチュワート・サトクリフを演じたときはその美貌が眩しかった。
『セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ』の反ハリウッド主義の監督役はあっぱれだったし、『ブレイド』のヴァンパイア役も色気があって良かった。
そんなスティーブン・ドーフ主演の、堂々の未公開作をここで取り上げるわけだが、さすがクセモノ俳優、中身のほうも超異色! 彼が扮するのはプロの強盗で、序盤はサスペンスもののノリだが、あれよあれよと転調し、突如巨大ハサミで首チョンパになる人物が登場。血がドピュ〜。
詳細は伏せておくが、この衝撃はお得感あり。しかも映画は、ホラーコメディというか、ホラーコントの領域に。
ドリフの『8時だョ!全員集合』的に言えば、「志村ぁ〜、後ろ後ろ!」な展開が続出。笑かしといて、スプラッター趣味は貫き、死人の顔面皮のパッチワークや内蔵はみ出し、切断ショットにはこだわりをみせる。こりゃあドリフ版『悪魔のいけにえ』か。
2007年NYホラー・フィルムフェスで作品賞と主演男優賞を受賞。トンデモ殺人鬼と対決するツイてない男を余裕で演じたスティーブン・ドーフにここで一言。あんた、いい仕事してるよ!
後日談を補足!『悪魔のいけにえ』の殺人鬼が、いかにして殺人鬼になったかを描いた『レザーフェイス‐悪魔のいけにえ』(2017年)に、スティーブン・ドーフは出演しました。狂気の警官を演じています!
週刊SPA!2008年11月4日号掲載記事を改訂!