こちらの映画レビューは、日活ロマンポルノのタイトルを紹介していく男性誌での連載コラム記事の復刻です。
その前にロマンポルノ解説を少々。
ロマンポルノは、R-18の映画で日活のレーベル。アダルトビデオとは別くくりの、年齢制限のある一般邦画として分類される映画です。
詳しくはこちらで紹介しています。
前置き以上!
あ、コンプライアンス意識皆無時代のコラムゆえ、所々のバカすぎる文面には要注意でお願いします。
データ
1971年
監督:西村昭五郎
出演:白川和子、浜口竜哉、南条マキ、前野霜一郎、美田陽子、関戸純方、高橋明、島村謙二、大泉隆二、氷室政司、マイク・ダニーン、小泉郁之助
脚本:西田一
崖っぷち日活の起死回生、ロマンポルノ第一弾は超特大の大ヒット!
(轟夕起夫)
トンネルを抜けると、そこは断崖だった。男と女は、車の中で裸になっていた。
「国境の長いトンネルを抜けると…」の「雪国」は本作とは全く関係ありません、ちなみに。
これですべては決まった!
1971年11月20日にスタート。記念すべき日活ロマンポルノの第一作として映画史に残る『団地妻 昼下りの情事』のラストシーンである。
公開時の宣伝速報には、こんなキャッチが刷りこまれている。
「あら! 可愛いコケシ……」
「うふふ……型といい、手触りといい、アレにそっくりでしょ」
女盛りをもて余す団地妻の激しい性のもだえを痛烈に描く!!
うふふ……ヨイですねぇ〜。
今ならコンプラ案件の、こんな宣伝が街のあちこちにあった時代でした。
倦怠期。ワーカホリックの夫に満たされない主婦が、ふとした浮気がもとでコールガール組織にハマってしまうというお話。
これは、起死回生の経営転換に出た日活の新路線“ロマンポルノ”の大バクチであった。もしここで失敗すれば、すべては水泡に帰してしまうほどの崖っぷち……。
日本映画低迷期でしたので。
ところがフタをあけてみると、当時の金額で興収1億円! 超特大ヒットである。土俵ぎわで大逆転。“団地妻”は流行語となり、シリーズ化もされ、新路線“ロマンポルノ”は順調な船出を飾った。
成人映画のタイトルが流行語です! ミラクルです。
救世主は白川和子。200本以上のピンク映画で鳴らし、この『団地妻 昼下りの情事』で日活に引き抜かれた彼女の魅力に、男は全員、上半身も下半身もスタンディング・オベーションを捧げた。
白川和子さんは日活ロマンポルノを牽引したと言っていい女優さん。その後も映画やドラマで長年活躍され、その業績から平成30年、第73回毎日映画コンクールにて栄えある「田中絹代賞」を受賞されました。
近年では『凶悪』(2013年)にも出てましたね。
白川さん、現在の所属事務所はWAHAHA本舗!(2020年10月現在)
思えば、冒頭に掲げたラストシーンは、誕生したばかりのロマンポルノの“映画宣言”のようなものだったのかも知れぬ。
そう。ついにすべてが夫にバレてしまい、なじみの男と、破れかぶれの旅路に出る団地妻。車を運転する男に、助手席の彼女はフェラチオで奉仕をしている。
そしてトンネルを抜けると、そこは断崖だった。男と女は突然、車の中で裸になっていた――この、ロマンポルノ的ダイナミズム!
絶頂に至った男は女もろとも車ごと断崖から落ちて(堕ちて)いき、映画はダイビング・エクスタシーとともに終わる。なるほど、二人はトンネルを抜け、崖っぷちから飛翔した、日活ロマンポルノそのものであったのだ。
だがもうひとり、この映画に出ていて、飛ぼうとした者がいる。『野良猫ロック』シリーズなど、日活ニューアクションでイイ味を出してた前野霜一郎。
『野良猫ロック』シリーズ(1970〜1971年)は全5作品。和田アキ子さん、梶芽衣子さん、藤竜也さん、原田芳雄さんらが出演してました。
彼は1976年3月23日、ロッキード事件の黒幕にして右翼の大物・児玉誉士夫邸へ、撮影のためチャーターしたセスナ機で突入し、自爆テロ死したのだ!
驚愕のセスナ特攻事件でした。
ロッキード事件とは、アメリカの航空機製造会社ロッキードの受注にからむ、世界的規模の汚職事件。田中角栄元首相が逮捕されました。
それもまた、思えばのちの日活ロマンポルノの苦難の歴史を象徴するかのような、ダイブであった。
ビデオボーイ2001年1月号掲載コラムより
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