読む映画リバイバル『サムサッカー 17歳、フツーに心配な僕のミライ』

『オーラの泉』よりも心に染みる!? マイク・ミルズ監督の優しいメッセージ

(2007年2月6日号より)

 その業績は、記し始めたら何ページも費やすことになるだろう。偉才マイク・ミルズ。人気ブランド「X-girl」のロゴや、ビースティ・ボーイズ、ソニック・ユースのCDジャケ、ミュージッククリップにCM(GAPのミュージカル風のやつ)などなど、グラフィックデザイナー、映像作家として幅広く活躍してきたアーティストだ。

 そんな彼が長編初監督にチャレンジした『サムサッカー』。さぞかしアートな匂いプンプンかと思いきや、そうではなかった。独断的に例えれば、本作は“めちゃくちゃセンスのいい『オーラの泉』”みたいなノリの、染みる映画なのであった。

 主人公のジャスティン(ルー・プッチ)は17歳になってもサムサッキング=親指しゃぶりがやめられない青年。まだDT(童貞)。抗鬱剤を飲むことになり、いったんは事態は好転するが、待っていたのはさらにドツボな展開! 画面に向かって「江原啓之と美輪明宏のカウンセリングを受けな」と声をかけたくもなるが、劇中、江原&美輪さんの代わりに登場するのは、キアヌ・リーヴス扮するちょいと怪しい歯科医。彼は主人公にこう諭す。「大切なのは、答えのない人生を生きる力だよ」と。

 いい言葉だけども、イマイチ抽象的な気も。だが、そこはマイク・ミルズ。撮影、編集、音楽、どれも卓越していて、真綿に水が染み込むごとく数々の優しいメッセージが心に浸透していく。スピリチュアルな世界を人に上手く伝えるのはとても難しいワザ。『サムサッカー』は『オーラの泉』以上にそれに成功している。

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親指を吸う癖の治らない17歳のジャスティンは、“誰もが認める自分”になるための正しい道を探そうとするが……。マイク・ミルズ監督は世界有数のトップクリエイター。05年ベルリン国際映画祭銀熊賞〈最優秀男優賞〉、サンダンス映画祭特別審査委員賞〈演技賞〉に輝いたルー・プッチのリアルな佇まいも見モノ!

[週刊SPA!掲載]
●監督:マイク・ミルズ●出演:ルー・プッチ、キアヌ・リーヴス、他●2005年●アメリカ