読む映画リバイバル『リトル・ミス・サンシャイン』

ポンコツの黄色いフォルクスワーゲンは本当の家族の“ありよう”を代弁する

(2007年6月5日号より)

 インディーズ作品としては異例の全米スマッシュヒットを記録、先のアカデミー賞でも4部門にノミネートされ、惜しくも作品賞は逃したものの、脚本賞と助演男優賞を獲得したロードムービーだ。

 まず何がいいって、その移動手段、おんぼろだが目にも鮮やかな黄色のフォルクスワーゲンのミニバス。これが本作『リトル・ミス・サンシャイン』 のキービジュアルである。つまり、移動するホームドラマ。黄色の外壁で囲まれたささやかな空間は、登場人物たちの家の暗喩なのだ。

 すっかり心がバラバラになっている家族6人を乗せたミニバスは、末っ子が出場する“ミスコン会場”を目指す。が、クラッチがイカれていて“押しがけ”しないとうまくエンジンがかからない。そこで全員で力を合わせて押して、飛び乗ることに。劇中、何度も繰り返されるこのシークエンス、「壊れかけのミニバス」が機能不全に陥った家族を象徴しているのは明白だが、それ以上に、必死に前に押すしかない、その姿が家族というものの“ありよう”をわかりやく描き出し、じんわり胸を打つ。

 ちなみに脚本家のマイケル・アーントは、かのカリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガーの発言「この世で一番嫌いなものがあるとすれば、それは“負け犬”だ」に反発を覚え、このストーリーを生みだした。反撃の一手がイカしてる。バスが“突撃”するミスコンの開催地はカリフォルニア。末っ子に祖父は言う。「本当の負け犬は、負けることを恐れて何も挑戦しないヤツらだ」。これが本作の“返答”である。

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崩壊寸前の“負け組”家族の再生の道のりを、シニカルな笑いと感動とで綴るハートフルなドラマ。第79回アカデミー賞助演男優賞に輝いた祖父役アラン・アーキン、助演女優賞にノミネートされた末っ子役アビゲイル・ブレスリンほか、役者陣が皆いい。監督は、PVやCMを手がけてきた映像ディレクター夫妻。

[週刊SPA!掲載]
●監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス●出演:トニ・コレット、他●2006年●アメリカ