読む映画リバイバル『ブラザー・フロム・アナザー・プラネット』

シビアな人種問題を心温まるタッチで描いたSFヒューマンドラマの佳作

(2008年1月29 日号より)

 昨年の12月、アメリカ映像博物館の主催で、監督ジョン・セイルズと名優ダニー・グローヴァーを称える祝典が開かれたらしい。そうかぁ、元気だったか、ジョン・セイルズ! ダニー・グローヴァーとは新作『ハニードリッパー(原題)』も完成させているそうで、まだまだ現役なのが嬉しいではないか。

 80年代にNYインディーズの旗手として名を馳せ、90年代は傑作群像劇『希望の街』、ケルトの妖精伝説をモチーフにした『フィオナの海』などで偉才を発揮してきたセイルズ。さてそのフィルモグラフィーの中で最も愛すべき作品『ブラザー・フロム・アナザー・プラネット』もついにDVD化されるとあっては、日本でも監督として再評価の兆しあり!?

 本国での公開時には何と形容すべきか難しかったろうが、今ならば“脱力系コメディ”なんて都合のいい言葉がある。この低予算の手作り映画、ユルユルな感じがたまらなくイイ。しかし、設定はなかなかシビアなのだ。異星から地球に不時着し、NYのハーレムに住みついた宇宙人がいつしか「ブラザー」と呼ばれるように。彼の外見はまんま“黒人”(ジョー・モートン)。エイリアンとは本来“異邦人”の意味。つまり本作には繊細な、人種問題も込められているわけだ。とはいえ硬派ぶらず、リアルな生活描写と心温まるタッチが魅力的。

 ちなみに、宇宙からの追跡者(←メン・イン・ブラック仕様)を、若きデイヴィッド・ストラザーンとともに演じているのが監督セイルズその人。こういう映画を作る、実に“男前”な顔をしてますゾ。

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ある惑星の奴隷狩りから逃れ、地球にやってきた異星人<ブラザー>と、NYはハーレムの街の人々との交流をユーモアたっぷりに描いたSFヒューマン・ドラマ。日本では’86年に公開、若者を中心に絶大なる人気を博し、今日ではカルト・ムービー化していたところ、ファンの支持に応えて、デジタル・リマスタリングでの初のDVD化が実現。

[週刊SPA!掲載]
●監督:ジョン・セイルズ●出演:ジョー・モートン、ダリル・エドワーズ、他●1984年●アメリカ