読む映画リバイバル『ツイてない男』

笑いあり、首チョンパありの異色未公開作。ホラーコメディというよりホラーコントか?

(2008年11月4日号より)

 スティーブン・ドーフという男がいる。とまあ、何もこんなにかしこまって紹介する必要もないのだが、彼、最近「あの人は今!?」状態に陥っていないか。刑務所ものの新作『フェロン(原題)』の情報も一応は入ってはきたが、アメリカでもひっそりと公開されたらしい。

 一癖ある作品を選ぶ、いい俳優なのに。『バック・ビート』でビートルズの初期メンバー、スチュワート・サトクリフを演じたときはその美貌が眩しかった。『セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ』の反ハリウッド主義の監督役はあっぱれだったし、『ブレイド』のヴァンパイア役も色気があって良かった。

 そんなスティーブン・ドーフ主演の、堂々の未公開作をここで取り上げるわけだが、さすがクセモノ俳優、中身のほうも超異色! 彼が扮するのはプロの強盗で、序盤はサスペンスもののノリだが、あれよあれよと転調し、突如巨大ハサミで首チョンパになる人、登場。血がドピュ〜。

 詳細は伏せておくが、この衝撃はお得感あり。しかも映画は、ホラーコメディというか、ホラーコントの領域に。ドリフの『8時だョ!全員集合』的に言えば、「志村ぁ〜、後ろ後ろ!」な展開が続出。笑かしといて、スプラッター趣味は貫き、死人の顔面皮のパッチワークや内蔵はみ出し、切断ショットにはこだわりをみせる。こりゃあドリフ版『悪魔のいけにえ』か。

 2007年NYホラー・フィルムフェスで作品賞と主演男優賞を受賞。トンデモ殺人鬼と対決するツイてない男を余裕で演じたスティーブン・ドーフ。あんた、いい仕事してるよ。

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モスクワのペントハウスに潜入、黄金の十字架を頂きにきたプロの盗っ人。ところがそこは、猟奇的な殺人鬼の棲む場所だった! 撮影のブライアン・ロフタスは、グリム童話の『赤頭巾ちゃん』をモチーフにしたダーク・ファンタジー『狼の血族』(1985)の名手。デビュー作となるキット・ライアン監督、もうやりたい放題やってます。

[週刊SPA!掲載]
●監督:キット・ライアン●出演:スティーブン・ドーフ、他●2007年●ドイツ、アイルランド、イギリス、アメリカ