読む映画リバイバル『愛のむきだし』

“あっという間”の4時間。まさかパンチラ話にここまで深く感動させられるとは……

(2009年8月4日号より)

 初めに明かしておくがこの映画、えらく長尺で、およそ4時間近くもある。監督の園子温はといえば公開時、よく「体感時間は一瞬」と強気なコメントをしていたものだ。では実際はどうなのか。まあ“一瞬”は大げさだとしても、観れば「あっという間」なのは確か。どうか怖じ気づくことなかれ。挑むべし。’09年上半期の邦画のなかでもブッチギリの出来の作品だからである。

 ——と、いささか大きく煽ってしまったわけだが、一言で中身を要約するならば、これは変態と誤解された男のコと「男はみな変態」と誤解している女のコの物語だ。そこで映画のキービジュアルとなるのが「パンチラ」。何しろ主人公は、神業ともいうべきパンチラ盗撮の腕前を持った青年なのである。扮するのは人気ダンスパフォーマンスユニット、AAA(トリプル・エー)に所属する西島隆弘。あまりに超絶アクロバティックに盗み撮りをし、女装まですることになるのだが、美形ゆえにヨゴレ感が希薄。というか、その存在もアクションカメラ術も荒唐無稽すぎて、バカバカしくて笑える!

 荒唐無稽さではヒロインも負けてはいない。主人公が出会う運命の女、ヨーコ。ビッチな彼女は気持ちいいほどにスカートをひらひらと翻しながら、見事な体技でびしびしとキックを決め、“パンチラ上等”な格闘シーンを披露していく。ヨーコを演じたのは満島ひかり。陳腐な言い方
だが、女優魂をむきだしにしていく純度の高いパフォーマンスに、心かきむしられること必至。

 園監督は、すれ違う二人の関係性を“パンチラ”同様に、チラリ、チラリとジラしながら見せていく。そして後半、超絶アクロバティックな力技で、カルト教団に入信してしまったヨーコの救出劇を描き、さらにサプライズな展開を用意する。全てを見届けたアナタはこう呟くだろう。
「まさかパンチラ話でかくも深く感動させられてしまうとは……」

 愛をむきだしにしてゆく人々の迷走と疾走。意表を突く物語の連続が観る者を釘付けにする。もう一度言っておく。4時間はあっという間である。

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園子温監督の友人の、20数年前の“実話”が映画のベースに。その友人は盗撮マニアで、しかも妹が新興宗教に洗脳され、奪回するためにカラダを張って闘ったとのこと。本作は第59回ベルリン国際映画祭フォーラム部門にて、カリガリ賞と国際批評家連盟賞をダブル受賞。主題歌として使われた、ゆらゆら帝国のナンバー「空洞です」が絶大なる効果を発揮。

[週刊SPA!掲載]
●監督:園子温●出演:島隆弘、満島ひかり、安藤サクラ、他●2009年●日本