読む映画リバイバル『大人のオモチャ ダッチワイフ・レポート』

再検!日活ロマンポルノ

1975年産のオトナのための映画のおもちゃ

(2000年10月号より)

 人形にとり憑かれた男がいる。

 といっても、いっこく堂のことではない。医師だ。この『大人のおもちゃ ダッチワイフ・レポート』に登場する、北極調査隊の担当医(益富信孝)のことだ。

 彼は観測基地の中に幽閉された隊員たちを救うため、ある作戦を決行した男として、まず我々の目の前に現れる。秘密兵器ともいうべきダッチワイフのBB(べべ)の使用を許可し、発狂&暴発寸前の男どもを慰めたのだ(ちなみに最初にBBのお世話になる隊員役が名バイプレイヤーの粟津。今年3月15日に胃ガンで倒れられた。遅ればせながら追悼! その生涯に興味のある方は季刊「映画芸術」No.362をぜひ読んでほしい)。

 さて。内蔵テープで睦言と吐息を漏らし、グイグイ、クキキキと人間そっくりに機械仕掛けで動くBB。しかし日本に帰ってくるや医者は、より高性能なダッチワイフを開発しようと工房を訪ね、生みの親である人形師に「BB2号を作れ」と新たな計画書を渡す。と、そこで何気なく発したひと言がいけなかった。

「俺はBBの洗浄はしたが、一度たりとも使いやしなかったよ」

 しらじらしくそう言い放つ医者に対し、著しくプライドを傷つけられ、カチンときた人形師。「だったら今度のヤツも絶対に抱くなよ」と挑発するや、「もちろん」と医者は指切りをするのだった。

 いやあ面白え話でゲス。脚本は誰か?

 人形にとり憑かれた男、大和屋竺。

 鈴木清順門下生で、『荒野のダッチワイフ』なんて監督作もあって……と説明し始めるとキリがないので、こちらも興味のある方は「悪魔に委ねよ」(ワイズ出版)、「大和屋 ダイナマイト傑作選」(フィルムアート社)を読んで頂戴ね。

 話を進めよう。医者は帰国後、やはりBBをひそかに自宅に運んでいた。しかも専用テープまで仕込んで、ウヒウヒと抱いていた。その姿はさながらダッチワイフ漫才。だが、生身の女ではなく、人形に魅入られた男はふと思う。「ところでBBのモデルって一体誰よ?」

 イヤな予感は当たった。人形師の亡き妻だった。幻滅。「でも今度のは俺の理想の女がモデルさ」。やがて彼のもとにBB2号が届いて、喜び勇んでのしかかったその時!
「う、うぎゃ〜〜〜」

 人形師によって細工された、文字通りの“万力”。餌に魚が食いついた光景を眺めているのは、用なしとなったBBただひとり……。

 スゴイ映画だ。監督は曾根中生。だが、この異才に関しての書物は、残念ながら1冊も出ていない。

[ビデオボーイ掲載]
●監督:曾根中生●出演:ひろみ麻耶、益富信孝、丘奈保美、他●1975年●日本