読む映画リバイバル『花芯の刺青 熟れた壷』

再検!日活ロマンポルノ

キェシロフスキ・コレクション開催中に緊急紹介

(2003年5月号より)

 日本の、そして日活ロマンポルノの“キェシロフスキ”といえば小沼勝だ。
なぬ!? Who is キェシロフスキ?
 ほら、『デカローグ』『ふたりのベロニカ』『トリコロール』3部作などで知られるポーランド生まれの映画作家、1996年に54才の若さで早逝したクシシュトフ・キェシロフスキのことですよ。
「偶然と必然と運命」とを天秤にかけ、ときに政治的寓話も盛り込み、力ワザでドラマチックにストーリーを転がしてみせた(でもトンデモ系ぎりぎりの)語り部の才人!

 まあ、「SM描写のない小沼勝」がキェシロフスキで、「政治的寓話のないキェシロフスキ」が小沼勝といえるか。ただ、どちらも“視線劇の官能”を撮らせたらピカイチ。たとえばキェシロフスキには『愛に関する短いフィルム』があり、小沼にはその極致と呼ばれる傑作『花芯の刺青 熟れた壷』がある。谷ナオミ扮するヒロインと、かつて自分を犯した歌舞伎役者の息子(中丸信、現・中丸新将)との運命の出会い。「これを許さにゃあ、キェシロフスキも許されまい」てな偶然の出会いなのだが、嫉妬の炎を燃やしつつ、ナオミが、中二階からセックスを覗き見、自らを慰める場面のパースペクティヴな光景の素晴らしさよ! 彫師(蟹江敬三)との刺青シーンの凄さも含め、本作は、ほとんどアートフィルムの域に達している。

 そんな小沼勝の新作は『女はバス停で服を着替えた』。かつて不義の関係にあった男(遠藤憲一)と女(戸田菜穂)が、「偶然と必然と運命」の力ワザで北海道でサルサを踊る(笑)。やっ、やはりこの監督は、日本のキェシロフスキだ!

 ところで『熟れた壷』の音楽は樋口康雄。再評価著しい名曲「I LOVE YOU」で知られるピコである。ロマンポルノは『エロスは甘き香り』ほか何本か担当しているが、ここでのトゥーマッチな和楽テイストは、ちょっと笑えマス。

[ビデオボーイ掲載]
●監督:小沼勝●出演:谷ナオミ、北川たか子、花柳幼舟、他●1976年●日本