『耳をかく女』(2012年)は監督:堀内博志、出演:桜木梨奈、中田暁良、ほか。
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どこか往年のロマンポルノぽさも
映画を観ながら、改めてこう思った。「耳って、なんてエロティックな器官なんだろう」と。
「耳」好きで有名な作家に村上春樹がいるけれども、もしかしたら彼女の美しい耳、春樹さんも気に入るんじゃないか。
彼女とは、“耳をかく女”こと本作のヒロイン・絵菜──。
演じているのはこの役にオーディションで選ばれ、映画初出演、さらには主演デビューも果たしてしまう桜木梨奈である。
要は「耳かき店」で働き、様々な(クセを持った)お客と出会いながら深淵なる「耳」の世界へといざなわれてゆく物語なのだが、合わせて自分の内と外との風通し、“耳管通気”の良さを求める青春劇にもなっており、どこか往年のロマンポルノぽさも!
ロマンポルノについては、こちらで解説しています。
監督・脚本・編集は、1974年生まれの堀内博志。劇場デビュー作はドキュメンタリー『加地等がいたー僕の歌を聴いとくれー』で、2作目『私の悲しみ』はTAMA NEW WAVE 2011のグランプリ&女優賞をダブル受賞。
『私の悲しみ』は14人の男女の群像劇。レビューあります。
オルタナティブなミュージシャンたちとのつながりのとても深い監督で、今回のアシッド・フォーク・シンガーソングライター、satomimagaeの音楽は、耳の中に綿棒を這わせるがごとき“快”な味わいだ。
前半、絵菜のキャラクター紹介のくだりがややスローモーで退屈だが、「耳かき店」の住人、宇野祥平、広澤草らが出てきてから俄然面白くなってくる。
とまれ、ヌードも辞さない桜木梨奈は、すでに石井隆、佐藤寿保監督らとの次回作(『フィギュアなあなた』『甘い鞭』『華魂』)も控えている。彼女は逸材だと思う。
エロティックファンタジーな『フィギュアなあなた』は監督:石井隆、出演:柄本佑、佐々木心音、ほか。
石井隆監督作『甘い鞭』は出演:壇蜜、ほか。
『華魂』は佐藤寿保監督作、主演に桜木梨奈。
映画秘宝2013年1月号掲載記事を改訂!
『耳をかく女』はインディーズ映画配信サイト DOKUSO映画館で配信されています。
くわしくはこちらでどうぞ。