フランク・キャプラ監督って? クリスマス映画のクラシックど定番『素晴らしき哉、人生!』を撮った巨匠監督です。
フランク・キャプラ監督をザザザッと解説した雑誌記事を復刻です!
人間の存在を肯定する大団円現代に蘇るキャプラの夢と理想
毎年クリスマス間近になると思いだされるのが、フランク・キャプラ監督の『素晴らしき哉、人生!』(1947年)だ。
人生に絶望した善良な男を2級天使が立ち直らせるヒューマン・ドラマの決定版。我が家を目指して雪の夜道を無我夢中で走る、ジェームズ・スチュアートの「メリー・クリスマス!」の声。
あの幸福に満ちたラストシーンには観るたびに涙させられてしまう。
ジェームズ・スチュアートは出演作はほかに、アルフレッド・ヒッチコック監督作『めまい』『裏窓』『知りすぎていた男』や、ジョン・フォード監督の『リバティ・バランスを射った男』など。錚々たる巨匠の映画に主演しています。
同じコンビで作った『我が家の楽園』(1938年) と『スミス都へ行く』 (1939年) もそうだが、キャプラ映画には人間の存在をとことん青定する感動的な大団円が用意されている。
そこには、アメリカの民主主義の代弁者キャプラの理想が常にこめられていた。
作家としての全盛期は圧倒的に戦前。だがその作品は今なお、我らを魅了してやまない。
特に、金持ちの家出娘と失業中の新聞記者との珍道中を描いた『或る夜の出来事』(1934年)はトレンディドラマの元祖だ。
ヒロインのクローデット・コルベールが、ナイスな脚線美を見せてヒッチハイクを成功させる有名シーンをはじめ、男と女のちょっとHな関係をソフィスティケイトに綴りあげた。
クローデット・コルベールはほかに、セシル・B・デビル監督作『クレオパトラ』などに主演しています。
かと思えば『群衆』(1941年)では、新聞記者に架空の人物へと仕立てられた男の苦悩に迫り、いち早くメディアと真実の問題に取り組んだ。
ちなみに「Meet John Doe」(ミート・ジョン・ドー)という原題をもつ『群衆』、あのブラット・ピット主演の大ヒット作『セブン』(1995年)の殺人犯もこの名前を使用していた。
キャプラ映画は今日の映画作家たちにも何かと言及されることが多く、それはアメリカの理想の社会の光芒を感じさせる作品だからに違いない。
第二次世界大戦中には「われわれはなぜ戦うのか」という戦意高揚映画シリーズを進んで作り、生粋のアメリカ人かと思いきや、生まれはイタリアのシシリー島のパレルモだったりする(6歳でカリフォルニアに移住)。
なんともヒューマニストの一語では語りきれぬ、興味のつきない人物である。
フランク・キャプラ プロフィール
1897年5月18日(19日説も)、伊・シチリア島パレルモ生まれ。1921年無声喜劇全盛のアメリカ映画界に入る。巧みなユーモアで理想主義や夢を盛り込んだ名作を次々に発表した30年代アメリカ映画界屈指の名監督。『或る世の出来事』(1934年)と『我家の楽園』(1938年)でアカデミー作品賞、監督賞を受賞。
1991年9月3日死去。
TVtaro1997年1月号掲載雑誌記事を改訂