本木雅弘主演の、1996年の映画のキレイバージョン『トキワ荘の青春 デジタルリマスター版』が2021年2月12日より順次全国公開決定です!
2020年5月29日に公開されるはずだったのですが、新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、延期されていたのでした。
手塚治虫、赤塚不二夫、藤子不二雄、石ノ森章太郎…。日本漫画界レジェンドたちが集った伝説のアパート「トキワ荘」の実話を元にした青春映画です。
2020年7月7日には、ミュージアムとしてトキワ荘を復元した、豊島区立トキワ荘マンガミュージアムもオープン!
コロナで出鼻を挫かれましたが、動き出しております! もっともっと盛り上がっていただきたい! 応援したいっ!!
ってことで、掘り起こしました、当時のレビュー記事。
生前の赤塚不二夫さんにも取材し、いただいたコメントを織り込んで構成した貴重レビューとなります!
『トキワ荘の青春』データ
1995年
手塚治虫、赤塚不二夫、藤子不二雄、石ノ森章太郎ら日本の漫画史を築いた彼らが、昭和30年代に集った池袋のアパート、トキワ荘。このアパートで、漫画に青春を捧げた若き漫画家たちの交流を描く青春ドラマ。市川準監督は彼らを等身大の若者群像として淡々と描く。寺田ヒロオ役に本木雅弘、赤塚不二夫役に大森嘉之。
監督:市川準
出演:本木雅弘、大森嘉之、古田新太、生瀬勝久、鈴木卓爾、阿部サダヲ、さとうこうじ、翁華栄、松梨智子、北村想、土屋良太、柳ユーレイ、安部聡子、原一男、向井潤一、広岡由里子、内田春菊、きたろう、時任三郎 、桃井かおり
赤塚不二夫 プロフィール
あかつか・ふじお
1935年、満州生まれ。新潟から上京し、漫画を描きはじめ、「おそ松くん」で第10回小学館漫画賞、「天才バカボン」で第16回文藝春秋漫画賞を受賞。その他の代表作に「ひみつのアッコちゃん」「もーれつア太郎」「ギャグゲリラ」など多数。
2008年死去。
「手塚先生と同じ空気を吸ってみたかったんだよね」赤塚不二夫
(取材・文 轟夕起夫)
『トキワ荘の青春』は、かつて東京の椎名町にあった、全室四畳半・木造二階建ての古アパートが舞台だ。
炊事場とトイレは共同で、もちろん風呂などもなし。時が昭和30年代とはいえ、なかなかのビンボー長屋。
だがそこは、当時もいまも若き漫画家たちの伝説の地である。
トキワ荘は1982年に取り壊されていますが、トキワ荘跡地近くに記念碑が建っています。
いや、もっと言うならトキワ荘は、あらゆる若きクリエイターにとっての聖地であるのだ。
1931年、新潟から上京し、その住人となった赤塚不二夫さんはこう語る。
赤塚 なぜ、トキワ荘だったのかといえば、手塚治虫という“漫画の神様”が一時住んでいたところだったから。そこに入って、手塚先生と同じ空気を吸ってみたかったんだよね。それが僕ら、漫画家のタマゴたちにとっての憧れだったんだ。
その中からのちに、石森(石ノ森)章太郎や藤子不二雄などの人気漫画家が輩出されたのは有名な話だ。赤塚さんもまた、彼らに続いたひとりである。
そしてこの映画の主人公、本木雅弘が演じた寺田ヒロオは、そうした若き才能をトキワ荘へと呼び寄せて、いろいろと面倒をみた心やさしき先輩。温かなユーモアの光る野球漫画で一世を風靡するも、劇画ブームには背を向け、自ら筆を折ったといわれる信念の人だ。
赤塚さんは彼のことを親しみをこめて「寺さん」と呼ぶ。
赤塚 寺さんはねぇ、時代に取り残された漫画家だったんだよ……けど、そんな彼を主人公にしたからこそ、動いていく時代、それでも動じない寺さんのスピリッツが浮き彫りにされた。市川監督の目の鋭さを感じるよね。それは赤塚はこうで藤子不二雄はこうだったとか、史実をただナゾるだけではなく、映画としてちゃんとフィクションで仕上げている点にも現れている。トキワ荘のことはいままで、TVドラマとかいろいろと描かれてきたけれど、この映画がピリオドを打ったな。これ以上のものはもう作れないと思うからさ。
ちなみに市川監督、赤塚さんに対し、「これ、日本の映画史に残るかもしれないですよ」と自ら言ったのだという。
では、この作品を観る方々へ赤塚さんからのメッセージを。
赤塚 とにかく漫画が大好きで、漫画家になること、ただそれだけを純粋に思い続けていた僕らの青春時代。若者たちが観たら バカだなあ、って笑うかもしれない。けどいいんだ。そういう人にこそ観てもらいたいんだ。で、僕らの当時の生き方とキミたちのと比べてみてよ。それって絶対面白いと思うよ。
TVタロウ1997年3月号掲載記事を改訂!
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