竹内結子さんを偲び、雑誌インタビューのご縁でお話ししていただいた記事を復刻させていただきました。
2007年、映画『サイドカーに犬』の出演にあたって思ったこと、感じたことをあれこれ語っていただいています。
竹内結子プロフィール
タケウチ・ユウコ
1980年4月1日-2020年9月27日
埼玉県出身。
1996年に女優デビュー。
ドラマ出演では、フジ「ランチの女王」(2002年)、フジ「不機嫌なジーン」(2005年)、NHK大河「真田丸」、TBS「A LIFE〜愛しき人〜」(2017年)、WOWWOW「イノセント・デイズ」(2018年)など。
映画では『イノセントワールド』(1998年)で映画初主演。『黄泉がえり』(2003年)、『いま、会いにゆきます』(2004年)、『春の雪』(2005年)、『クローズド・ノート』(2007年)、『ミッドナイトイーグル』(2007年)、『チーム・バチスタの栄光』(2008年)、『 ジェネラル・ルージュの凱旋』(2009年)、『 なくもんか』(2009年)、『ゴールデンスランバー』(2010年)、 『 僕と妻の1778の物語』(2011年)、『はやぶさ/HAYABUSA』(2011年)、『 ステキな金縛り』(2011年)、『ストロベリーナイト』(2013年)、『残穢 -住んではいけない部屋-』(2016年)、『クリーピー 偽りの隣人』(2016年)、 『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』(2019年)など。
『サイドカーに犬』についても少々解説!
『サイドカーに犬』概要
不動産会社に勤める薫は、ひょんなことから、20年前・・・小4の夏に出会った女性ヨーコのことを思い出す。あの夏、母が家出した数日後、ヨーコはアパートにやってきた。明るく、母と違って細かいことにこだわらず、薫を子供扱いしないヨーコ。彼女との刺激的な夏が始まった。
2007年 監督:根岸吉太郎 出演:竹内結子、古田新太、松本花奈、ミムラ、鈴木砂羽、樹木希林、椎名桔平
では、インタビュー記事をどうぞ。
竹内結子・インタビュー
(取材・文 轟夕起夫)
さあ、映画の中のステキなヒロインに会いに行こう!! 名前はヨーコ。天衣無縫で、優しくて、とってもカッコよくて可愛い人。ただし名字は分からない。どんな漢字でヨーコなのかも分からない。演じているのはユーコ。『サイドカーに犬』で主演を務める竹内結子。『絆 -きずな-』(1998年)、『ヴィヨンの妻』(2009年)の名匠・根岸吉太郎監督との初コラボで、全編新たな魅力に包まれている。
「何も考えない方が近づける…難しいけど、居心地のいい役でした」
竹内 ヨーコみたいなキャラクターは初めてだったので、最初はやはり、どうしたらいいのか迷いましたね。自分の役の軸になるものは欲しいですから。そうしないと、自分がどこにいるのかよく分からなくなってしまう。でも、根岸監督と話をしているうちにだんだん、何も持たないままをさらしてしまえばいいのかも、と思えるようになりました。「ちょっとそこで煙草を吸ってみて」「ハイ」って感じで動き、フラットに、何も考えない方がヨーコに近づけていけたというか。根岸監督は、画面のつながりより、そのときそのときの感情を大切にしてくださる方なんですね。役について構えなくていいし、こんなにも撮影中、自分の顔を鏡で見ない現場もなかったです(笑)。
小学生の女のコ、薫の目の前に、ある日突然現れた謎の女ヨーコ。これは二人の物語。歳の離れた二人のひと夏の物語。芥川賞作家、大江健三郎賞作家でもある長嶋有のデビュー作が原作だが、後半は映画オリジナルの展開だ。
小説「サイドカーに犬」は、短編2作を収録した「猛スピードで母は」に入っています。
ヨーコのキャラはどこかジーナ・ローランズを彷彿とさせる。ヨーコと薫の物語は、銃の出てこない『グロリア』(1980年)のよう。
『グロリア』は、家族を殺され、自身も命を狙われている少年と、行きがかり上少年を助けることになったグロリアの、ふたりの逃避行。傑作です!
竹内 幸役の松本花奈ちゃん、あの上目使いで、ちょっと怯えながらもヨーコに興味を抱いていく距離の取り方、佇まいが素晴らしかった。台本をいただいて読んだとき、ヨーコの目線ではなく、なぜか薫目線でヨーコのことを眺めていました。一体、彼女ってどんな人なんだろう、って。こういう台本の読み方は珍しいんですけれど。私自身、ヨーコという役に出会えて、居心地が良くて……本当に得るものがたくさんありました。
ドロップハンドルの自転車を颯爽と乗りこなすヨーコ。彼女は風のような人だ。
竹内 撮影の2、3週間ぐらい前から少しずつ練習して、自転車の先生にも付いてもらいました。ドロップハンドルの自転車でレースにも出られる方で、いいフクラハギしてましたねえ(笑)。毎日乗っているとこういう足になるんだなあ、って、感心しました。
ヨーコが薫に「自転車に乗れるようになると世界変わるよ」と告げ、練習に励むシーンも印象的だ。最初の自立の時。きっと誰もが自分の子供時代を想い起こすだろう。
竹内 私も親からヨーコさんみたいに教えてもらって、自転車に乗れるようになったんだなあって。ウチの場合は、転んで痛い思いをしていても助けてはくれなかったんですよね。手を差し伸べてはくれるんだけど、自分で起きなさいって。そうやって人は大人になっていくんです(笑)。 自転車の荷台を掴んでくれていたはずなのに、振り返ったら手が離されていて自分ひとりで漕いでいる……というのが分かった瞬間、転んじゃうんですよ。撮影しながら、そんなことを想い出していました。
それにしてもタイトルに出てくる、サイドカーとは不思議な乗り物だ。オートバイにして車。この曖昧さが、劇中の割り切れない人間関係を象徴しているようにも感じる。
竹内 いろんなことが曖昧なのは、子供の薫の目線で描かれているからでしょうね。大人同士の会話って、耳に入っても何を言っているかよく分からないのが子供。そんな薫の気持ちが伝わってくる作品だと思います。
彼女の主演ドラマ「不機嫌なジーン」に続けて、主題歌を担当したのはYUI。仲が良く、ライヴにも足を運ぶそうである。
竹内 YUIちゃんの曲を聴いていると何気ない一言にドキっとさせられます。『TOKYO』って曲の中に「何かを手放してそして手に入れる」って歌詞があって。今回の主題歌も、ドキドキしながら聴き入りました。
そのタイトルは「Understand」。そう、本作は理解と共感、の映画。薫役の松本花奈は、竹内結子と過ごした時間を、ヨーコのことのようにいつまでも覚えているだろう。
竹内 何か悪いこと、いけないことを彼女に刷り込んでないといいんですけどね(笑)。
ヨーコとユーコ。『サイドカーに犬』は二人の女性、その両方を好きになる映画だ。
TV Taro2007年8月号掲載記事を改訂!
『サイドカーに犬』はAmazonプライム会員見放題タイトルにラインナップされています(2020年9月現在)。
U-NEXTでも、会員見放題タイトルに含まれています。
関連記事
竹内結子さんの他の出演作についての記事、こちらにあります。