大学の卒業制作で撮った映画が劇場公開、ソフト化も!快進撃な思春期ドラマ『みちていく』とは

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Photo by moren hsu on Unsplash
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繊細かつスリリング。少女たちの内出血した青春

【概要】

若手監督の登竜門、第15回 TAMA NEW WAVE コンペティションにてグランプリ、ベスト女優賞(山田由梨)を獲得した青春ムービー。山田由梨は“贅沢貧乏”という劇団の主宰としても活躍中だ。なお1991年生まれの監督、竹内里紗は高校時代、吹奏楽部に所属し、途中で辞めてしまった経験を持つ。

【レビュー】

 これは、極めて珍しいことなんである。大学の卒業制作(2013年度)ながら、都内のミニシアターを皮切りに大阪や名古屋などでも上映され、ソフト化もされた『みちていく』。撮影時21歳、竹内里紗の劇場初監督作だ。

 立教大学の「現代心理学部映像身体学科」という何やら難しそうなコースから生まれた映画なのだが、その内容はちっとも難解ではない。むしろ正攻法の撮り方、作劇スタイルで普遍的なテーマを扱っている……のだけれども、特別な、言葉には出来ない“何か”を立ち上らせる映画術を早くも体得しており、瞠目どうもくすべき才気を感じさせる。

 舞台は、とある女子高。ヒロインはこの2人だ。陸上部のエースと目される梅本みちる(飛田桃子)と、努力がなかなか結果に繋がらない部長の新田舞(山田由梨)。

 一見、対照的な関係のようでいて、両者とも「自分はいまだ、何者にもなれていない」と焦り、もがき、心に埋めがたい空白を抱えている。

 特にルナティックなみちるは、年上の恋人にカラダをキツく噛んでもらい、“噛み痕”をつけてもらうことでかろうじて精神を安定させており、映画はそんな思春期の少女たちの「内出血した青春」を繊細かつスリリングに描き出してみせる。

 主演の2人のあやうい魅力がとっても良く、月の満ち欠けをシンボリックに使っているのも上手い。

 もちろん、全く瑕瑾かきんがないわけではないが、原石の輝きが圧倒的。公開時のトークショーには女優の門脇麦や劇作家の福原充則、映画監督の今泉力哉、万田邦敏(大学のゼミの教授でもある)といった面々が登壇、ひとりでもグッとくる名前があれば気に入ると思う。

館理人
館理人

ちなみに!

門脇麦の主演作に、『世界は今日から君のもの』など!

館理人
館理人

福原充則の映画監督作では『愛を語れば変態ですか』があります。

館理人
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今泉力哉の映画監督作には『愛がなんだ』など。

館理人
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万田邦敏の映画監督作に『イヌミチ』など。

 監督の竹内里紗は、『桐島、部活やめるってよ』(2012年)で描かれなかった人たちを本作に出そうとした。なぜならば『桐島〜』のなかには自分を仮託できるキャラクターがいなかったから。彼女の意見に「俺も、私も!!」と我が意を得た方々には、激しくお奨めしたい。

轟

週刊SPA!2016年5月3日号掲載記事を改訂!