「ショウ・マスト・ゴー・オン」「たとえ何があっても幕を降ろすな」の精神を謳い上げた、笑える感動ホラードラマ!『カメラを止めるな!』

スポンサーリンク
館理人
館理人

劇場公開後、高評価の口コミから大ヒットとなった「カメ止め」こと『カメラを止めるな!』。

テレビ放映もされました。

館理人
館理人

こちらのレビューは劇場公開前のものです。大ヒットの予兆が紹介されていますヨ!

スポンサーリンク

熱き我が映画づくりの日々を呼び覚まされた映画愛溢れる自主映画

Photo by Ashwini Chaudhary on Unsplash

上田慎一郎監督は独学で映画を学び、短編映画『ナポリタン』『テイク8』など、現在までに7本の映画を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得。

本作が劇場用長編デビュー作。上田監督曰く、前半は「ワンシーン・ワンカットのゾンビ・コメディ」、後半は「ジェットコースターのような壮絶なドタバタコメディ」!。

   ・   ・   ・

 出来ることなら即座に、この映画の予告編をネットで観てもらいたい。タイトルは『カメラを止めるな!』。

 監督と俳優養成の専門学校「ENBUゼミナール」がワークショップを行いながら製作する、シネマプロジェクトの第7弾。

 早い話がインディーズ映画だが、国内では「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」でゆうばりファンタランド大賞(観客賞)を受賞。

 さらに、インターナショナル・プレミアとなったイタリアの「ウディネ・ファーイースト映画祭」では上映後、5分間ものスタンディングオベーションが起こり、アジア各国全55本のコンペ作の中からシルバー・マルベリー(観客賞2位)を受賞。当日の様子はその予告編でも紹介されている。

 ではどういう内容なのか?

 とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影している。廃墟は、表向きは浄水場として作られた建物であったが、戦時中、裏では​日本軍が人体実験を行っていたとの噂が。

 どうやら死人を生き返らせていたらしい。

 すると、本物のゾンビが現れて、襲われた撮影隊の面々は次々とゾンビ化していく――。

 ふと、こんなことを思い出した。1980年代、大学時代に8ミリ映画を監督したことがあるのだが、ロケ場所は新宿区の戸山公園にあった廃墟で、現在は「国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター」になっている。

驚いたのは1989年、その廃墟近辺から大量の人骨が発見され、それはどうやら、かの悪名高き「731部隊」による恐るべき“人体実験の被験者”という可能性があったのだ!

 ついでに書けば、敷地は立入り禁止区域で、初日にいきなりパトロールがやってきた。

 まだケータイ電話のない時代だ。次の撮影から見張りを立てて、トランシーバーで連絡を取り合った。絶対にあそこは、ヤバい場所であった……。

 と、脅かしておいて何だが、いま記したことは、『カメラを止めるな!』には何も関係ない。

 実は『ONE CUT OF THE DEAD』というタイトルの、37分間に渡ってワンカットでゾンビ映画を撮っている人たちの物語で、後半は時間を大きく巻き戻して、その現場で“本当に”起きていたこと、“七転八倒”ぶりのすべてが描き出されていくのだ。

 ではなぜ、不要な話を挟んだのかというと、曲がりなりにも熱き、「我が映画づくりの日々」を思い出させてもらったから。

 本作は、ゾンビ専門チャンネルの開局記念スペシャルドラマを任された、売れないディレクターの(家族の)物語でもあって、「早い、安い、質はそこそこ」をモットーに生きてきた男が、「生中継でゾンビ物をワンカットで」という無茶な企画に挑み、覚醒していく卓抜なヒューマンコメディでもあるのだ。

「カメラを止めるな!」と叫ぶ主人公の苦闘、つまり「ショウ・マスト・ゴー・オン」「たとえ何があっても幕を降ろすな」との精神を謳い上げた、大いに笑えて感動的な作品!

 監督、脚本、編集は、1984年生まれの上田慎一郎。彼は、真の事件は常にフレームの外で起こっていることを知っている、鋭敏な感覚の持ち主だと思う。

轟

ケトル2018年6月発売号掲載記事を改訂!