アニメ映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016年)のご紹介です!
レビューをどうぞ!
葛飾北斎、歌川国芳、斎藤清、灯篭流し…がトランスフォーム!?
『コララインとボタンの魔女』『パラノーマン ブライス・ホローの謎』などを手掛けてきたスタジオライカの最新作。
『コララインとボタンの魔女』はストップモーションアニメのホラー。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のヘンリー・セリック監督作です。
『パラノーマン ブライス・ホローの謎』はコメディホラー。
アカデミー賞では長編アニメ映画賞と視覚効果賞にノミネートされた。
これで監督デビューしたトラヴィス・ナイトは、スタジオライカのCEO。2018年にアメリカで公開された『トランスフォーマー』シリーズの初スピンオフ『バンブルビー』の監督も務めた。
変形するロボット玩具「トランスフォーマー」をモチーフにした映画『トランスフォーマー』は、2020年5月現在、『トランスフォーマー/最後の騎士王」のシリーズ5作まで公開されています。
そのスピンオフ映画が、ロボットのバンブルビーを主役に据えた『バンブルビー』!
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どうだろう。「日本人は日本(文化)が好き」という一文を、あなたは何ら違和感なく受け止められるだろうか?
筆者は疑問である。特に文化に関して。コトによったら(日本好きを自認している)海外の人のほうが、ずっと精通しているのではないか。
アメリカで製作されたこのストップモーションアニメ『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を観ると、つくづくそう思う。
まず、冒頭のシーンから「参りました」と頭を下げたくなる。
大いに荒れ狂う海のなかへと投げ出された一艘の小舟。これ、葛飾北斎の有名な浮世絵、「神奈川沖浪裏」をモチーフにしているのだ。
それから途中で出てくる巨大な骸骨のバケモノ。こちらは歌川国芳の代表作「相馬の古内裏」を模していて……
と紹介していくと、いかにもなジャポニスム(日本趣味)のようだが、内実はちょっと違うのであった。
主人公は三味線弾きで、その音色で折り紙に命を与え、意のままに操ってみせる隻眼の少年クボ。
舞台は鎌倉か室町時代=中世の日本で、クボは殺された父母の仇を討つ旅の道中、護衛役を買って出た頼れるサル(声:シャーリーズ・セロン)と、弓の名手であるクワガタ(声:マシュー・マコノヒー)を仲間にし、伝説の3つの武具を探しにゆく――と、ビックリするほど王道な“日本昔ばなし”が用意されているのだ。
お盆や灯篭流しといった“伝統、風習”もないがしろにしない。
が、折り紙がクボの力でさまざまなモノにトランスフォームしたり、三味線が武器になったりするところは西欧的な発想。和を尊重しつつ、洋との融合が楽しい!
黒澤明や宮崎駿も大好きな、監督のトラヴィス・ナイトは1973年生まれの逸材。何やら木版画家・斎藤清の作品からもインスピレーションを得ているそう。
斎藤清って人のこと、知ってました?
この男は映画界に現れた、日本研究の先駆者・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の再来なのかもしれない。
日本に帰化した小泉八雲は、小説家でもありました。
週刊SPA!2018年6月12・19日発売号掲載記事を改訂!