アニメ映画『聲の形』(2016年)は大今良時の漫画が原作、京都アニメーションが制作を担当しました。
レビューをどうぞ!
公開時のキャッチコピーは、主人公が口にする「君に生きるのを手伝ってほしい」
「週刊少年マガジン」に連載されていた大今良時の同名漫画が原作。
公開館数120館と小規模にもかかわらず興収23億円を突破!
聴覚障害者の描き方が“感動ポルノ”との批判もあったが、眼目は他者に「気持ちを伝える」ことの難しさ、これだ。
小学生時代の石田将也の声をアテた松岡茉優の見事な“演技”にも注目を。
松岡茉優の出演作に大泉洋との共演映画『騙し絵の牙』があります。こちら2021年公開予定作です。
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2016年はコアなファンではない、世間一般の観客にも劇場用アニメがグッと浸透した記念すべき年だった。
代表的な大ヒット作品といえば『君の名は。』『この世界の片隅に』、そしてここにご紹介する『映画 聲の形』である。
『君の名は。』は新海誠監督作。体が入れ替わった男女が時代も場所も違うそれぞれの立場を経験することで互いに理解してゆくラブストーリー。日本で公開された映画の歴代興行収入第4位の大ヒットとなりました。
『この世界の片隅に』は戦時の広島・呉を生きた女性を描きます。片渕須直監督作。
ちなみに同監督のアニメ『マイマイ新子と千年の魔法』のレビューはこちらにあります。
オープニングクレジットのバックにザ・フーの名曲、ロック・アンセムの「マイ・ジェネレーション」を持ってくる趣向からして規格外。
ザ・フーはイギリスのロックバンド!
このサウンドのパンク衝動のまま、主人公のガキ大将、小学6年生の石田将也がやらかしてしまう。
先天性聴覚障害を持つ転校生・西宮硝子との距離感がうまく掴めず、ひどくいびり倒してしまうのだ。
そのことがトラウマになり、硝子は転校、かたや将也のほうはクラスから孤立してハブられ、自己嫌悪と人間不信に陥る。こんな感じの導入部。
何ちゅうハードな設定なんだ!
が、先ほど記したごとく、あくまでこれは序章に過ぎない。
5年後、高校3年生になった将也と硝子の後日譚が本作の中心である。
再会を果たすことになる2人はそれぞれ、心に深いキズを負っている。対人恐怖症気味に他者の視線を避けてまわる将也に関しては、自業自得だと思うだろう。
だが、もしそんなふうに感じたならば映画の術中に嵌ったも同然。地に堕ちた主人公の生き直しのドラマに目が離せなくなる。
2人の“例の一件”を知る、というか確実に当事者であった小学校時代のクラスメートたちも登場し、マウントポジションを微妙に取り合う青春期の面倒臭さが前景化する。
監督は『けいおん!』で知られる山田尚子。
『けいおん!』は、廃部寸前の軽音部を盛り立てる女子高生たちを描きます。
主人公の主観ショットを多用しながらエモい構図(特に足へのこだわり)、ポップなカット割でヘヴィな物語を糖衣錠のようにくるみ、映画を躍動させている。
公開時のキャッチコピーは、主人公が口にする「君に生きるのを手伝ってほしい」。
それが人気声優・入野自由によって発せられる瞬間の素晴らしさよ。自分のことが嫌いな人は、ぜひ!
週刊SPA!2017年5月23日発売号掲載記事を改訂!