監督はデヴィッド・ロバート・ミッチェル、マイカ・モンロー主演。低予算映画ながら、その秀逸なアイディアで多くの観客から支持された映画です。
レビューをどうぞ!
「It=それ」はとことん後をついてくる!
低予算ながら全米で4館から1600館以上に拡大ロードショーされた新感覚ホラー。
監督のデヴィッド・ロバート・ミッチェルはこれが2作目。1910年に発表したデビュー作『アメリカン・スリープオーバー』は、青春映画の傑作として高評価された。
ちなみに本作は1980年代のジョン・カーペンター映画を参考にしたそう。
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問題は“それ”は何なのか?なのである。
全米で論議を巻き起こしつつ特大ヒットを飛ばした『イット・フォローズ』。直訳すれば「それが追いかけてくる」。そう、「It」=“それ”はとことん後をついてくるのだ。標的が死ぬまでずーっと。諦めることなく。
話を少し整理しよう。
好きな相手と念願のSEXをした19歳の女子大生がいる。すると相手は彼女を薬で眠らせ、廃墟へと連れ去り、ある告白をする。すなわち「俺が感染した“それ”をさっき、君に移した」と。
彼女は移されたヤバい“それ”を目撃、以後、命を狙われることに――。
何だよ思わせぶりに“それ”を繰り返し、ボカシやがって!という読者の声が聞こえてきそうだ。
でも仕方がないのだ。“それ”の正体は“それ”でしかないのだから。
男の説明によれば“それ”は変幻自在で動きは鈍いが頭はいい。その姿は、移された者だけにしか見えず、SEXで人に移せるが、相手がもし死んでしまったら元の木阿弥。
映画史を振り返ればこれまで、画期的な“恐怖の存在”が数々登場してきたが、本作の脚本&監督を手がけた俊英デヴィッド・ロバート・ミッチェルは新たな発明に成功したのである。
主人公の女子大生役は、超大作『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』のヒロイン、マイカ・モンロー。
彼女を救うために仲間たちがいろいろと協力するのだけれども、そこから浮き上がってくるのは大人になること、未来への漠たる不安を抱えた若者たちの青春群像だ。
ミッチェル監督はホラー映画の枠を飛び越え、世界的な文豪ドフトエフスキーの「白痴」やT・S・エリオットの詩を引用、全米で真面目に“それ”の意味しているものが論じられたのだった。
ネットを開けば、すぐに答えが出てきてしまうご時世だが、未見の方はまず作品に当たり、“それ”の正体を独自に探ってみてはいかがだろうか。
週刊SPA!2016年7月12日発売号掲載記事を改訂!