「愛すべきろくでなし」を演じさせたら当代一のビル・マーレー主演、爺のアイドル映画としてもお勧め『ヴィンセントが教えてくれたこと』

館理人
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ビル・マーレー主演、ろくでなし爺と少年の心の交流を描く映画です。

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レビューをどうぞ!

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型破りな老人と少年の友情物語。ちりばめられた暗喩にも注目

Photo by Ankush Minda on Unsplash

北米でわずか4館の限定公開から2500スクリーンに拡大、スマッシュヒットを飛ばした。

ゴールデン・グローブ賞にて作品賞にノミネート、ビル・マーレイも主演男優賞候補に。また、少年役の新鋭ジェイデン・リーベラーは本作の演技で一躍ハリウッドの注目株となった。

CM界から転身したセオドア・メルフィ監督の映画デビュー作。

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セオドア・メルフィ監督は、この映画の後の監督作『ドリーム』で、アカデミー賞作品賞と脚色賞にノミネートされました!

黒人差別が激しかった時代に、NASAが差別撤廃の一歩を踏み出すことになった有能な黒人女性の活躍を描きます。

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 ここに、前々から感じていたことを発表させてもらおう。「ビル・マーレイの出ている映画にハズレなし!」。

 ……と記したあとで何だが、「本当にそうか? ちょっと言い過ぎたかも」と若干のためらいも。

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ビル・マーレイの出演作に、大ヒット『ゴースト・バスターズ』シリーズや…

同じ日を繰り返すことになってしまった男性を演じたラブコメ『恋はデジャ・ブ』、

スカーレット・ヨハンソンと共演の、ソフィア・コッポラ監督作『ロスト・イン・トランスレーション』など。

 しかし、これはかなりの確率で実証されていると思う。この『ヴィンセントが教えてくれたこと』も、“当たり”の一本だった。

 舞台となるのはニューヨークのブルックリン。無愛想で口が悪く、飲んだくれでギャンブル狂い、老人と呼ぶには頑健で、ビル・マーレイにぴったりのヴィンセント役。

 ある日、シングルマザーと12歳の少年が隣に引っ越してきた。とくれば、型破りな変人と少年との「年令の離れた友情物語」になだれ込んでいくことは想像に難くないが、よくある感動ストーリーと早合点してしまうのは実にもったいない。

 例えば、本作のそこかしこに配置されている“星条旗”にぜひ注目していただきたい(重要なシーンではヴィンセント自身、星条旗がデザインされたTシャツを着ている)。

 それから劇中、少年が読んでいるのがシェル・シルヴァスタイン原作の有名な絵本「おおきな木」であったり、映画の原題がそもそも、カトリックの“聖人”を意味する「St. VINCENT」であったり。

 エンディングを飾るのはビル・マーレイの調子外れの歌声で、だがそれはボブ・ディランが1975年に発表したアルバム『血の轍』に収められた「嵐からの隠れ場所」。

 ちりばめられた暗喩はひとつの焦点を結び、つまりは“アメリカという国の過去と今日”について考えさせる映画となっているのだ。

 ちなみにヴィンセントはアイルランド移民という設定で、ビル・マーレイ本人もアイルランド系である。

 完全に当て書きされていて、虚像なのに実像にも見え、彼の人生そのものを讃えているかのよう。「愛すべきろくでなし」を演じさせたら当代一、65歳(公開当時)の爺のアイドル映画としてもお勧めだ!

轟

週刊SPA!2016年3月22日発売号掲載記事を改訂!