トップフードスタイリストの仕事の技を鑑賞するなら…例えばパン香る大泉洋主演『しあわせのパン』

Photo by Jonathan Borba on Unsplash
館理人
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食品のコマーシャル、飲食店のリーフレット、ドラマの食事シーン、映画の小道具…。フードスタイリストはあちこちで活躍しています。

館理人
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フードスタイリストの第一人者、石森いずみさんの仕事を堪能できる映画のひとつ『しあわせのパン』をご紹介。

館理人
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映画を観れば画面からパンの香りが漂ってくるような気がするし、美味しいパンを食べたくなるし、パン屋を営みたくなるし、思い出のパンを思い出したり、パン屋巡りをしたくなる。

館理人
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監督、出演者ほかスタッフの力はもちろんですが、フードスタイリストの力量、凄さが出ちゃってます。

館理人
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レビューをどうぞ。

【概要】

北海道の湖のほとりでパンカフェを営む夫婦と、その店を訪れるお客たちの人生を描くハートフルなヒューマン・ドラマ。

夫婦を演じるのは2012年 にデビュー30周年を迎える原田知世と、北海道出身でテレビ・映画に活躍中の大泉洋。

監督は、NHKでドキュメンタリーを数多く手がけ、本作が長編映画初監督となる三島有紀子。

美しい四季の風景と、自然の恵みをいかしたパンや料理の数々がスクリーンを彩る。

★東京から北海道・洞爺湖畔の月浦に移り住み、湖が見渡せる丘の上でパンカフェ「マーニ」を始めた夫婦。夫の水縞は毎日パンを焼き、妻のりえがそれに合うコーヒーを淹れ、料理を作る。そこには日々、いろんなお客様がやってくるのだった。

【スタッフ&キャスト】

監督・脚本:三島有紀子
フードスタイリスト:石森いづみ
出演:原田知世、大泉 洋、あがた森魚、余貴美子、森カンナ、平岡祐太、光石研、八木優希、中村嘉葎雄 渡辺美佐子ほか

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北海道の美しい湖のほとりにあるパンカフェから届いたおいしい物語

 誰にでも1つや2つ、「大切なパン屋さん」があると思う。筆者の場合は、東京・目黒通り沿いにあった「IBIZA」という店だ。「あった」と書かなければならないのが残念だが、石釜で焼く無発酵のイビザパンが美味で、またスペイン料理のレストランでもあったので、塩漬けの豚肉を1年以上熟成させたスペインスタイルのハムも絶品だった。のちに世田谷代田に「パン焼き人」という店としてリニューアルオープンしたが、惜しくも閉店した模様。原田知世と大泉洋がパン屋職人の夫婦を演じた映画『しあわせのパン』を観ながら筆者は、あのイビザパンの味を想い出していた――。

 パンカフェを営む2人は、北海道の月浦、洞爺湖が見渡せる丘の上に「マーニ」というお店を開いている。そこには日々、いろんなお客さんがやってくる。

 北海道から出られない青年トキオ(平岡祐太)。何でも聞こえている地獄耳の硝子作家ヨーコ(余貴美子)。口をきかない少女(八木優希)とパパ(光石 研)。革の大きなトランクを抱えた山高帽の阿部さん(あがた森魚)。沖縄旅行をすっぽかされた傷心のカオリ(森カンナ)。そして、想い出の地に再びやってきた老夫妻(中村嘉葎雄&渡辺美佐子)……四季の料理、はたまた人生の四季の味わい……とでも言おうか。

 この映画に登場するパンやお菓子、料理をざっとご紹介しよう。

 豆の白パン、グリーンアスパラとホワイトアスパラのコンソメスープ。いろんな種類のトマト、アスパラガス、パプリカ、ズッキーニ、ラディッシュ……などが並んだ夏野菜のバーニャカウダ。夏の食卓を彩るブルーベリーのパンとコーンのパン。 王妃マリー・アントワネットの好物でもあったクグロフは、フランスのアルザス地方や、ドイツ、オーストリアに古くから伝わるお菓子。かぼちゃのポタージュ は、ゆっくりと炒めた玉葱を隠し味に。秋には林檎のはちみつパン、栗のパン。冬野菜のポトフ、小豆と青えんどうを使った豆の白パン、チーズのパン。ローストチキンのローズマリーのせ、スペインオムレツも!

 これらの料理を劇中に用意したフードスタイリストは、石森いづみさん。日本を代表するこの世界の第一人者である(今をときめくフードスタイリスト・飯島奈美さんも石森さんのアシスタントだ!)。

 かの伊丹十三監督に声をかけられ、”ラーメン・ウエスタン”の傑作『タンポポ』(1985年)で初めて映画の現場に参加。以後、伊丹作品を支える重要なスタッフに。

館理人
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『タンポポ』は亡くなった夫のラーメン店を継いだ未亡人の、ラーメン店再建物語です。

 筆者は『スーパーの女』(1996年)の撮影時に石森さんに取材する機会を得たのだが、 お仕事同様に品が良く、本当に素晴らしい人柄だった。

館理人
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『スーパーの女』は傾きかけたスーパーを立て直すことになった主婦を描きます。

 石森スタジオのHPには、『しあわせのパン』の製作をめぐり、こんな言葉が――。
「パンは生きもので、プロセスの中でどんどん育っていく。焼き上がれば、今度はどんどん劣化していく。ほんの1~2分の間で、それが見えてしまう。難しい題材なのだ」

 難しい題材を華麗に仕上げる、そんな石森仕事が堪能できる『しあわせのパン』を観ながら、四季の料理を味わい、人生の四季も味わい、そして自分の「大切なパン屋さん」に思いを馳せてみてはいかが?

館理人
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広告なども広く手がける石森いづみさん。『しあわせのパン』の後の三島有紀子監督作品『ぶどうのなみだ』でもフードスタイリストで参加しています。

『ぶどうのなみだ』も大泉洋主演、北海道を舞台に、ワイン造りに情熱を傾ける農家を描いています。

轟

ぐるなびPRO(2012年)掲載記事を改訂!