『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞作品賞受賞で、韓国映画がいまアツいです。
これまで韓国映画を観たことがなかったたくさんの人たちが、『パラサイト〜』を観に映画館に足を運んでいます!
他の韓国映画も観てみたいという人におすすめの映画、ありますよたくさん!
そのひとつが『哭声/コクソン』。轟のレビューで紹介です。
『チェイサー』『哀しき獣』に続くナ・ホンジン監督作はオカルティックな「幻魔大戦」へ!
日本のベテラン俳優でありながら過去に、リドリー・スコット、ジョン・ウー、クエンティン・タランティーノなどの映画に出たことのある人がいる。
その猛者の名は國村隼。
順に『ブラック・レイン』『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』『キル・ビルVol.1』がそれなのだが、そこにまた新たに一つ、讃えられるべき海外仕事が加わった。
『ブラック・レイン』には高倉健、松田優作らが出演してましたが、國村隼も出演しています!
『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』では、國村隼は殺し屋役でした。
『キル・ビル』ではヤクザの親分役。
韓国の俊英ナ・ホンジン監督が放った『哭声/コクソン』だ。
『哭声/コクソン』は2016年の映画です。
これが「超絶かつ悶絶モノ」の、怪物的な作品でありまして!
映画はイエス・キリストの復活を示す「ルカによる福音書24章」の中の言葉で始まり、続いて、広大な河川にてひとり、國村隼が釣りをし、竿先に餌を付けているシーンが映しだされる。
とても静かなプロローグ。
さて場面変わって早朝、殺人事件の報が入り、現場へと向かう準備をしている村の巡査の姿が。
扮するは名バイプレーヤーとして鳴らしてきたクァク・ドウォンで、初めての主役。丸みを帯びた体、人のいい顔つきが観るものを油断させる。「天下泰平が服を着て歩いている」といった感じなのだ。
が、現場に到着するやトーンは一変する。
肌が酷く爛れ、まるでゾンビのようになった男が両腕を手錠で繋がれており、どうやらソイツが犯人で、自分の家族を皆殺しにしたらしい。
飛び散った血痕と惨たらしい死体。辺りはヤバい空気が充満している。
検証の結果、幻覚性のキノコを男が食したせいだということになるが、村人の噂では日本からやってきた得体の知れない「よそ者」の仕業だと。
山奥に棲んでおり、「全裸に限りなく近いフンドシ姿で、地面に這いつくばって野生の鹿(の生肉)にむしゃぶりついていた」だの「河川で女を襲った」だの、ウソかマコトか風評が広がっていく。
その「よそ者」を演じているのが國村隼である。
村人たちは、謎の湿疹により殺人ゾンビ化する怪現象、そして次々と起こる家族の不審死の原因を國村隼、ではなかった……山奥の「よそ者」に求める。
凡夫鈍才ぶりで笑わせ、主演にもかかわらずコメディリリーフ的な役回りであった巡査も、娘に異変があり、ついに「よそ者」に会いに山奥へと足を踏み入れるときがやってくる。
果たして一体、正体は何なのか?
監督3作目のナ・ホンジンは、前の『チェイサー』(2008年)と『哀しき獣』(2010年)も剛腕でドラマを引っ張り、凄絶なバイオレンス描写で強烈無比な作風だったのだが、今回は画面から醸し出す一触即発の緊張感はそのままに、転調の妙を見せる。
『チェイサー』は連続殺人事件がモチーフ。
『哀しき獣』も殺人事件もの。
つまり「いなか、の、じけん」(夢野久作)がいつしか、この世の最後の審判にも通ずるような、オカルティックな幻魔大戦へと雪崩れ込んで行くのだ!
出番的に言うならば國村隼は、決して多くはない。しかし、作品全体を支配してみせる。
その証拠に韓国最大級、最も権威のある青龍映画賞にて監督賞、音楽賞、編集賞と並び、外国人アクターとして初となる男優助演賞と人気スター賞を獲得した。
彼にはもはや、“国際派”なんて肩書きよりも、現実世界を飛び越えている“魑魅魍魎系”の称号を与えたい。
ケトル2017年2月号掲載記事より!
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