2007年、荒川良々、木村佳乃共演の映画です!
レビューで紹介です。読んで映像を想像しているだけでも癒される気がする脱力系。
愛すべき不器用な登場人物を見ていると、「俺も大丈夫」という大らかな気分になれる
バイトで植木職人をしている古本屋の長男・照男、29歳の「理想と現実」を脱力タッチで描く。
荒川良々にこの照男役をあて書きしたのは、「秀幸」から「容介」に改名した藤田容介監督。
かつて大人計画の舞台の映像担当で名を成し、長編映画は、怪作『グループ魂のでんきまむし』(1999年)以来!
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何をもって『全然大丈夫』なのか。題名の意味を、この映画は前面には押し出してはこない。でも確かに観ていると、「全然大丈夫」という大らかな気分に。
つまりこれはそういう御利益ムービーなのだ。
主演は荒川良々。
出てきた時点で仏顔、ありがた〜い気持ちになるが、その役柄は「世界最恐のオバケ屋敷を作りたい!」という無邪気な夢がちょいとイタい、煩悩でいっぱいの30間近の男。
腐れ縁の友、岡田義徳が扮するお人よしなサラリーマンも含め、「全然大丈夫」ではない人たちの“ラブコメ”が展開していく。
ヒロインは木村佳乃。彼女のキャラが強烈で、大好物はちくわ、強度の対人恐怖症で手先が不器用な絵描き。衝撃的なまでにドジで、ティッシュペーパーの箱のフタがうまく開けられず、エレベーターボタンを押せば人さし指を骨折!
まるでカルト芸人・鳥居みゆきが憑依したかのような怪演で、今のところ木村佳乃史上、最高にふり切れた役である。
木村佳乃の新作に、2020年6月公開の『騙し絵の牙』があります。大泉洋との共演。
日々カラ回り、マイナスオーラを出している人ばかりが登場するこの映画、実はブレイク前の鳥居みゆきも出演しており、おなじみの“マサコ”キャラとは違う姿が観られる。
といっても荒川良々の父親役、蟹江敬三と劇中で「米」という珍妙な曲を歌うシーンでだが。
ともかく、安易に泣きにも癒しにも着地せず、愛すべき欠落人間たちを描いて、おもしろ切ない“ラブコメ”を成立させた点は貴重。
公開時は単館スマッシュヒットしたそうで、そんな事実を知ると日本映画も「全然」、いや、「まだまだ」大丈夫かも、と思えてくる。
週刊SPA!2008年9月9日号掲載記事を改訂!