こちらの映画レビューは、日活ロマンポルノのタイトルを紹介していく男性誌での連載コラム記事の復刻です。
その前にロマンポルノ解説を少々。
ロマンポルノは、R-18の映画で日活のレーベル。アダルトビデオとは別くくりの、年齢制限のある一般邦画として分類される映画です。
詳しくはこちらで紹介しています。
前置き以上!
あ、コンプライアンス意識皆無時代のコラムゆえ、所々のバカすぎる文面には要注意でお願いします。
データ
1984年
監督:堀内靖博
主演:泉じゅん、水木薫、山路和弘、中丸新将、伊藤公子、大滝かつ美、花上晃、阿部雅彦、内藤忠司、高瀬将嗣 脚本:一色伸幸、村上修
愛は金では買えません 金も愛では買えません
(轟夕起夫)
セックスを金で売ったり買ったりすること。これは言うまでもなくセックスに、貨幣原理による“経済システム”が導入されるということだ。
面倒なことを言い出しましたね。聞きましょう。
10万円で取引された セックスは、10万円で買える分だけの価値があり、わずか10円で取引されたセックスは、10円で買える分だけの価値しかない。
…聞きましょう。
つまり労働価値としては同じセックスが、ある時は海外旅行代、ある時は約2分間の電話代へと交換価値が変動してしまうというわけである。
で、本題。
お願いします。
この映画の新妻(泉じゅん)はつい浮気をしてしまう。夫(山路和弘)は、彼女の姉と婚約していたのだが不慮の死を遂げ、結果自分が“その代用品”として選ばれたような不安にさいなまれたからだ。
山路和弘さんの一般映画デビューは『TATTOO<刺青>あり』(1982年)。現在も舞台をはじめドラマや映画でご活躍されてますが・・・
声優としてもたっっくさんの作品に参加されてます。例えば『進撃の巨人』のケニー・アッカーマン役とか!
さらに、夫の幼なじみ(水木薫)がやってきてはこれ見よがしに馴れ馴れしい態度をとる。そんな状況が重なって、彼女は浮気をした。
脚本は一色伸幸さん。脚本を手がけた『私をスキーに連れてって』(1987年)は大ヒット!
だが……夫が愛しているのは本当に妻だけだった。彼女は悔恨する。ではどう始末をつけるのか。金を貰うのだ。
「いくらでもいいから払って!」
ついつい一夜を過ごしてしまった男に嘆願して、金を払って貰うのである。そうすれば、それは「浮気」ではなく「売春」になる。要するに情を交わしたのではなく、一定の労働に対して報酬が支払われたという“雇用関係”になる。
と、彼女は考えたわけだ。
一色伸幸さんは売れっ子脚本家として映画、TV共に青春ドラマを多数手がけました。『病院へ行こう』(1990年)と『僕らはみんな生きている』(1993年)では日本アカデミー賞で脚本賞をとってます。
いや、脚本を担当した一色伸幸(!)と村上修、そして「第1回監督作品」とクレジットされた堀内靖博はそう考えたわけだ。
じゃあ、相手と場合によっては交換価値が変動してしまうセックス関係を「売春」と呼び、それが不変的ならば「夫婦愛」とでも名づけるのか?
さらに面倒な話になってきましたが…聞きましょう。
たとえ夫婦間であっても、セックスは一種の“労働”である。言い換えるなら、情が交わされていようと、愛が満ちあふれていようと、何らかの交換価値がそこでも確実に働いている、という意味で間違いなく“労働”である。
それはこのロマンポルノの4年後、脚本家としてブレイクした一色伸幸が『木村家の人々』 (1988年)で再度、主題に掲げたものでもある。
桃井かおりと鹿賀丈史が扮した夫婦の間に、貨幣原理による“経済システム”が導入される。つまりセックスする際に妻は、夫から金を貰うのである。正当報酬として。
10万円セックス、10円セックスにはそれぞれの価値がある。では、0円セックスの交換価値とは一体?
0円=スマイル。マクドナルドはそうだった。いいんじゃないか、スマイル。交換しあえれば。ただし、お愛想笑いの可能性は大であるが……。
愛に経済がからむと多様なドラマが生まれますね〜。
ちなみに『木村家の人びと』の主題歌「きのうのレジスタンス」は爆風スランプでした。
ビデオボーイ1998年8月号掲載コラムより!
『主婦と性生活』は、
動画配信サービス【TSUTAYA TV】で動画配信サービスされています。(2020年10月現在)
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