読む映画リバイバル『サンキュー・スモーキング』

主人公は、植木等の当たり役“無責任男”のUSA版。でも内容は、実に硬派だった

(2007年9月18日号より)

 どこの世界にも“弁の立つヤツ”はいる。本作の主人公の肩書きは、タバコ研究アカデミー広報部長。すなわちタバコ業界のスポークスマンで、その巧みな話術、ディベート術で世間をスイスイスーダラダッタと泳いでいく(アーロン・エッカート、好演!)。まるで植木等の当たり役、“無責任男”のUSA版みたいだが、単に特異なキャラに寄りかかった作品には終わっていない。

 劇中には、離婚後、別々に暮らしている息子(名子役キャメロン・ブライト)が登場する。スポークスマンとして職務を全うすればするほど世間から白い目で見られてしまう主人公。でも12歳の子供の目には、仕事のできる尊敬すべき存在に映っているのだ。そんな息子の前で彼はいかに振る舞っていくべきか。これは2人の風変わりな親子関係の築き方、さらにはタバコの是非を例にとって「人間どう生きるべきか」、つまりは「自己選択」に関してまで考察を深めていく硬派な作品でもある。理にかなった筋運びと軽妙な演出が実に見応えあり。では、このクレバーな映画を作った人物とはいったい何者なのか?

 ’77年生まれのジェイソン・ライトマン。父親はヒット職人のアイヴァン・ライトマン監督。ジェイソンは生後11ヶ月で撮影現場デビュー、7歳のときには『ゴーストバスターズ』の現場に。偉大なる父を慕い、早くから業界入りして短編やCM製作で名を馳せ、ついに長編に挑んだ。ちなみに原作者に、「あなたの本を台無しにするために僕は雇われた」とカマして脚本協力を得たそう。ここにもえらく“弁の立つヤツ”がいた。

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タバコ業界の腕利きPRマンが主人公の知的論争エンターテインメント。原作はクリストファー・バックリーの小説「ニコチン・ウォーズ」。小規模な公開ながら、全米興行成績8位にランクイン、日本でもスマッシュヒットを記録した。余談だが、映画の中でタバコを吸うシーンは1カットもない。

[週刊SPA!掲載]
●監督:ジェイソン・ライトマン●出演:アーロン・エッカート、他●2006年●アメリカ