読む映画リバイバル『ファンボーイズ』

『スター・ウォーズ』ファンによる、『スター・ウォーズ』ファンのための青春コメディ。新作を心待ちにした“あの熱狂”が蘇る!

(2010年5月10日号より)

  熱狂する対象が何であれ、ファンの放つエネルギーってやつは本当にスゴイ。時には思いがカラ回りしてしまう場合もあるが、でもやっぱり夢中になれるものがあったほうが、人生は楽しいに決まってる。

 そんな真理を描くこの映画『ファンボーイズ』に出てくるのは、『スター・ウォーズ』(以下SW)のファン。はっきり言ってオタクで、童貞感の漂うボンクラな4人組だ。アメリカンコメディではお馴染みの若者像だが、本作がよくできているのは舞台を“’98年”にしたこと。

 つまり、『エピソード1/ファントム・メナス』が公開された前年で、サーガの完結篇「ジェダイの復讐」から16年経て、改めてエピソード1に遡っていく新作を、彼らだけでなく世界中のSWファンは心待ちにしていた時代。あの“お祭り前夜”のワクワク気分を体験した人ならば、これは無条件で観たくなる舞台設定に違いない。

 が、しかしだ! 世の中にはSWに興味のない方もたくさんいるだろう。じゃあ、そっち方面の人は相手にしていない映画なのか? 答えはNO。なんとボンクラ4人組のなかに一人、末期ガンで余命わずかの奴がいて、「死ぬ前に新作が観たい」という最後の望みを叶えるため、皆でSWの創始者ジョージ・ルーカスの本社スタジオ、スカイウォーカーランチに侵入、エピソード1の完成フィルムを盗みだそうとするのだ。

 一見、広範囲な客層を惹きつけようとした、少々“反則”なシチュエーションに思えるが、ところが驚くことに、これがまったく湿っぽくない作品に仕上がっているのである。バカバカしさ全開の、珍道中コメディとして楽しめ、しかもSWという“夢中になれるもの”を通じて結ばれた「絆の強さ」も、イヤミなく綴られてゆく。

 そもそもSWファンである製作陣の熱きエネルギーが御大ルーカスの心を動かし、彼のバックアップもあって、本作は完成した。だからこそ劇中の「ファン同士の絆の物語」も信じられるのだ。それにしても……ラストの(シニックな)セリフさえも許したルーカス。なかなか、太っ腹な男である。

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レイア姫のキャリー・フィッシャー、ダース・モール役のレイ・パークらもカメオ出演する“スター・ウォーズ愛”に満ちた青春コメディ。日本ではファンによる署名活動で劇場公開が実現した。監督のカイル・ニューマンとSWシリーズとの出会いは、’77年初公開の「新たなる希望」。当時1歳半 で、兄弟とドライブインシアターで観たそう。

[週刊SPA!掲載]
●監督:カイル・ニューマン●出演サム・ハンティントン、クリストファー・マークエット、他●2009年●アメリカ