ゾンビ映画のご紹介!レビューをどうぞ。
ブラピが不死身すぎるはご愛敬!
【概要】
ゾンビ映画史上最大の200億円をかけた、監督マーク・フォスターによるパニックアクション大作。主演のブラッド・ピットは製作にも名を連ねる。原作小説を書いたのはマックス・ブルックス(父親はユダヤ人ネタを得意とした映画人メル・ブルックス)。劇場版より過激な長尺版本編を収録。
2013年 アメリカ 1時間56分
監督:マーク・フォスター 出演:ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス、マシュー・フォックス、ほか
【レビュー】
人の命は軽い。それは、映画の描写ではよくあることだが、この『ワールド・ウォーZ』でもまあ、大量の人たちがガッツリどっさりと死んでいく。いや、「人たち」と記したが、正確に言えばゾンビである。
説明するまでもなくタイトルの「Z」とはゾンビのことで、何の因果か世界中に未知のウイルスが蔓延し、アンデッドどもが世を徘徊しているのであった。
その原因究明に当たるのが、ブラッド・ピット扮する元国連捜査官で紛争解決のプロ。各国を飛び回り、ゾンビ大戦の渦中で体を張る姿が描き出されていく。
見どころはもう、人間とゾンビとの攻防に尽きる! 特に予告編などでも一部流されていたが、イスラエルの都市エルサレムでの「ゾンビ、壁登りシーン」が圧巻!
パレスチナ人地区に巨大防護壁を造り、安堵していたところ、主人公の目の前でゾンビの大群が身を重ねて壁をよじ登り、あげく滝のごとく地上になだれ込んでいくのだ。
それにしてもこのプラビ演じる主人公、あまりに「不死身」すぎて、ツッコミたくなってくるのが玉にきず。が、エルサレムを重要な地として出し、最後までイスラエル女性兵士と行動をともにする理由を深読みしてみた。
つまりユダヤ人により建国されたイスラエルのヒーロー、旧約聖書の「出エジプト記」で知られる指導者モーゼが主人公に重ねられているのかもしれないと。
終盤、紅海を2つに割ったモーゼの奇跡を彷彿とさせるシーンもあるので、そう思ったのだが、ともあれ、本作は生粋のゾンビ映画ファンの間では評判があまりよろしくない。
確かにゾンビ描写に関してはいささかヌルい。ぞんざいに扱われている。逆に言えばその分、現実の難民のような、ひとからげ感が表れている気も。
それがガッツリどっさり駆逐されていく。走るゾンビとの攻防を楽しませながら、「人の命は実際軽く扱われている」との事実をちょっぴり考えさせる映画でもある。
(轟夕起夫)
週刊SPA!2013年12月24日号掲載記事を改訂!