クロスジャンル・エンタメのお手本!『マディソン郡の橋』原作(ベストセラー小説)の、イーストウッド流映画化手腕

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Photo by William Bayreuther on Unsplash
館理人
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『マディソン郡の橋』は、原作本も映画も、いずれも大ヒット! 20年以上前の作品ですが、電子書籍化も動画配信サービスもされていて、両方それぞれの世界観を端末で楽しめます。

小説と映像、それぞれの良さがありますが、『マディソン郡の橋』比較するとかなり面白いです。

ベストセラーを映画化する難しさに挑み、小説の世界観を崩さず、映画として楽しめるヒット作を生み出したイーストウッドの手腕。

クロスジャンルに挑むクリエーターも参考にする『マディソン郡の橋』の世界を、ご紹介です!

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『マディソン郡の橋』映画と小説の関係

ストーリー

アイオワ州マディソン郡にある、屋根付き橋を撮りに来た写真家(キンケイド)と、その地に住む主婦(フランチェスカ)との、たった4日間に起こった出会い、恋愛、別れの物語。

小説データ

1992年
作者:ロバート・J・ウォラー
アメリカでは500万部を超える大ベストセラーに。日本でも200万部のベストセラーとなった。

映画データ

1995年
監督・主演:クリント・イーストウッド 出演:メリル・ストリープ
世界で大ヒット。賞レースでも評価され、メリル・ストリープはアカデミー賞では主演女優賞にノミネートされた。

館理人
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小説を映画ではどう表現したのか、細部を比較です!

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細部設定を比較

出会い

小説

道に迷ってトラックでやってきたキンケイド。フランチェスカは「太古からのしぐさ、人の心を惑わすしぐさ」に惹きつけられ、彼もまた運命的なものを感じる。そして屋根付き橋までの道案内を買って出た彼女は、その大胆な行動に自分で驚く。ちょっとカマトト入ってるフランチェスカ。

映画

道に迷ってトラックでやってきたキンケイドは車から降りて、フランチェスカに屋根付き橋への道をたずねる。家の近くだというのに、彼女はなぜかうまく教えることができず、結局自分がついて行って案内すると言う。ほのかなときめきと、長年家に縛られているフランチェスカの人生が巧みに暗示されている。

電話

小説

キンケイドはカフェに入り、町の閉鎖的な雰囲気を察知し、彼女と外で会うのをためらい、電話する。やや説明不足。

映画

カフェで、キンケイドは町中から冷たい視線を浴びている女性と会う。不倫によって話題を集めるこの女性は原作にはないキャラクター。町の閉鎖性がより表れ、フランチェスカの境遇を心配する彼の電話にも説得力が。

Photo by Sergey Shmidt on Unsplash

会話

小説

家に招かれたキンケイドは、一緒に食事の準備をしながらカメラマンという仕事や芸術論などについてマジメに熱っぽく語る。なんだか気取っててスノッブ野郎なカンジ。

映画

キンケイド、世界中を旅してまわって体験談を身振り手振りを加えて披露、ジョークも交えて彼女を大いに笑わせちゃう。普段は無口そうなのに心を開放できるのか、いいカンジ。

ダンス&シーン

小説

フランチェスカは新しいドレスを着て鏡をのぞき「なかなかいいと思うけど」と自画自賛。彼も「とてもエレガントです」と褒めちぎり、夕食の時、ラジオから流れてきたスロー・テンポの「枯葉」をBGMに、ふたりはダンスを踊る。「素敵な香水だね」「ありがとう」。そしてベッド・インのお決まりのコース。

映画

2日間の夕食。ラジオからは超エロい歌声が代名詞の、ジョニー・ハートマンのジャズ・ナンバーがかかり、ベッドに行く前からすでにこのダンスシーンでとろけるようなムード満点。翌日、ふたりがナイト・クラブに行き、踊る映画オリジナルのシーンもグッド。

別れ

小説

フランチェスカは夫とふたりの子供を持つ自らの責任をやはり深く噛みしめ、別れの言葉を伝えると泣きだす。長い間ふたりは抱き合い、その夜再びH。ヤルことはヤル。

映画

最後の抱擁を交わした時に、彼女の服のボタンがちぎれ落ちる。小道具の使い方の妙。

館理人
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…というわけで、これらを踏まえてのレビューはこちら!

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小説より、お伽話に寄せた映画版

 かたや世界中を駆けまわる「ナショナル・ジオグラフィック」誌のカメラマン。かたやアイオワ州の田舎暮らしで子持ちの主婦。その夏、ふたりが運命の出会いを果たした時、ロバート・キンケイドは52歳、フランチェスカ・ジョンソンは45歳だったーー。

 そう、まったく違う人生を経ながらふとめぐりあった、もはや若くはない男と女。ふたりが心底愛しあった永遠の4日間、を清らかなタッチで綴り、小説「マディソン郡の橋」は大ベストセラーとなった。原作者のロバート・J・ウォラーはアイオワ州ウィンターセットの屋根付き橋へ出向いた際インスピレーションを受け、この物語を2週間で一気に描き上げたという。

 さて面白いのは小説の中で、架空のキンケイドとフランチェスカが、あたかも本当に、実在していたかのように記述されていること。

 フランチェスカの死後発見された日記をもとに、ウォラー自らが調査し、これを一冊にまとめたという実話スタイルになっているのだ。しかし一方で時に「ウソつけ!」とツッコミを入れたくなるほど、このあざとい構成がやや気になりもする。

 そこで映画版。クリント・イーストウッドがキンケイドを演じ、監督した本作を観てみよう。こちらは 永遠の4日間、が、美しくもはかない御伽話であることを示し、かえって感動的だ。

 まず原作者ウォラーによる語り部をやめた。で、代わりにフランチェスカ (メリル・ストリープ)の日記を子供たちが見つけ、その知られざる過去を追想するスタイルを取った。

 こうして映画版は一貫して、ヒロインの想い出のまま、永遠の4日間を描いてゆく。

 庭先で水浴びする筋骨隆々のカラダを2階のカーテン越しに覗き、風呂場では淫らな夢想に耽るフランチェスカ。彼女の中でキンケイドは、どこまでも美化されていく。

 でもいいのだ。彼こそは夢の男。これはフランチェスカ同様、毎日に退屈しきった全女性のための、淡くも、完璧な御伽話なのだから。

(轟夕起夫)

轟

TV Taro1997年6月号掲載記事を改訂!

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