『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーク』(2016年)はイタリア映画。イタリアの映画賞で7部門を受賞しました!
日本アニメファンのイタリア人監督作です。
レビューをどうぞ!
マカロニ・ウエスタン的ダークマンが、病んでる女との交流を経てヒーローに
イタリアのアカデミー賞にあたるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、新人監督賞、プロデューサー賞、編集賞の最多7部門を受賞した。
ちなみにエンディングロールで、バラードに編曲された「鋼鉄ジーグのうた」を披露しているのは主演クラウディオ・サンタマリア。
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今や、日本のサブカルチャーに精通、はたまた傾倒している外国人の存在は何ら珍しいものではない。
ここに紹介する『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』で長編デビューを飾ったイタリア男もそう。
1976年ローマ生まれのガブリエーレ・マイネッティ監督。少年時代から日本のアニメの大ファンなのだ!
ちなみに本作品でオマージュを捧げられている『鋼鉄ジーグ』とは永井豪原作のSFロボットアニメで、日本では1975〜76年にかけて、そしてイタリアでは1979年に放送され、人気を集めた。
マイネッティ監督は再放送で観たというが、ところでこの映画、ジャンルとしてはSFロボットものではない。
その基本設定を大胆に換骨奪胎、無精髭の“マカロニ・ウエスタン”的なダークマンが、ヒロインとの交流を経てヒーローになっていく姿を描いている。
マカロニ・ウエスタンって? マカロニ・ウエスタン愛溢れる映画『ランゴ』のレビューで触れてます!
主人公はしがないチンピラで盗みを働き、逃亡中、川に沈めてあったドラム缶のなかに落ちて放射性物資の廃液を浴び、特殊パワーを身につけることに。
だが空を飛べるわけでも必殺技を手にするわけでもなく、単に蘇生力のハンパない身体と怪力の持ち主となるのであった。
初めは私利私欲のためにパワーを行使するが、転機が訪れる。アニメ『鋼鉄ジーグ』の熱狂的なファンである、少々病んでいてイタいヒロインの登場で、巨大ロボ“ジーグ”の操縦士と見なされ、彼は次第に正義へと目覚めてゆくのだ。
本家『鋼鉄ジーク』では、主人公の司馬宙がロボの頭部に変身し、支援機に乗ったヒロインが残りの胴体や手足のパーツを放出、磁石の力で合体して毎回、マグネロボが完成する。
つまり、女性の助けがなければ“ヒーロー”になれないわけで、マイネッティ監督はそのスピリットを(形を変えて)継承しているのである。
ロボット物ではないが、映画はオリジナルをリスペクトし、日本発イタリア経由の“ヒーロー譚”を作りだすことに成功。天晴れ!
週刊SPA!2017年12月26日発売号掲載記事を改訂!