監督は杉作J太郎。出演は飯島洋一、タナダユキ、みうらじゅん、リリー・フランキー、ほか。2006年の映画です。
形は任侠アクションですが、ジャンルでくくれば「脱力系」かも。レビューをどうぞ!
闇の中から“男のエンタメ”は生まれる
杉作J太郎が監督した任侠アクション。
スナックを営むユキの亭主は、暴力団の人間を殺傷し、刑務所に服役中。刑務所内での組織の報復から逃れるため、司法当局と取引するユキ。だが、内偵活動で、ある暴力団に近づいたことから窮地に陥ってしまう。
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風で揺れる男のネクタイ。もうひとり、スナイパーはスコープ付きライフルを構えている。狙いはヒロイン、スナックのママ(タナダユキ)か、刑務所帰りのその夫(みうらじゅん)か。
タナダユキ演出のドラマ「東京女子図鑑』はアマゾンで配信中、フジテレビドラマ「夫のちんぽが入らない」は
【フジテレビオンデマンド】やNetflixで配信中です(2020年3月現在)。
タナダユキ監督ドキュメンタリー作品『タカダワタル的』のレビューはこちら。
そこに着流し姿の渡世人が登場。日本刀を振り下ろし、スパッと斬られた男の揺れるネクタイがカットイン。カッコいい。監督は誰だ? 何と杉作J太郎だ!
タイトルは『怪奇!! 幽霊スナック殴り込み!』。公開時、下北沢のミニシアターでは『任侠秘録人間狩り』(こっちが監督デビュー作)と2本立て。
かつて当たり前であった興行形態を踏襲、東映のプログラムピクチャー的な、「A面B面あるでよ〜」的なお得感を復活させたのだ。なので、鑑賞するなら2本立てで観るべし。
『怪奇!! 幽霊スナック〜』の魅力を、暴力団員役のリリー・フランキーが、劇場用パンフレットでこう喝破している。
「石井輝男監督みたいに、凄く杜撰な部分と完璧主義な部分が共存している」
グダグダだが先を読ませず飽きさせず(それは『任侠秘録〜』も同じ)、文字化不能なデタラメなおもしろさ。
ちなみに稲村ヶ崎の海岸がロケ地に選ばれたのは「杉作J太郎の愛する石川梨華が好きな場所だから」との説も……。
が、これは遊びではない。2本ともギラギラとした活劇である。自ら手にしたカメラのズームの心地よさ。編集、音の使い方もグっとくる。つまり、センスがいいのだ。
まだまだ待機企画満載、映画作りのために設立した「男の墓場プロダクション」。墓場の鬼太郎か杉作J太郎か。闇の中から、男のエンタメは生まれる。
週刊SPA!2006年12月5日号掲載記事を改訂!