炭鉱で働く男たちが、稼ぐためにストリップ興行を目指すコメディですが、人間のおかしみとひたむきさが滲み出る良作。
監督はピーター・カッタネオ、出演はロバート・カーライル、 トム・ウィルキンソン、他。1997年のイギリスの映画です。
監督のピーター・カッタネオはこの作品で、米アカデミー賞監督賞にノミネートされました。ではレビューをどうぞ!
人生はオフサイド(=敵よりも前に出て、ボールを受け、シュートしてはいけない)をめぐる攻防
失業中で身も心もドツボ状態の野郎6人が一念発起。なんと雁(カリ!?)首揃えて男性ストリップに挑んじゃうてな痛快作。
その出会いから、思わず拍手喝采の〈スッポンポン〉ショーへと至るプロセスは、踏んだり蹴ったりな“現実”を映しだしつつ、一方で「バンド結成映画」の味わいにも似た絶頂感を描きだしていく。
紆余曲折に満ちた、サエねえ野郎どものエピソードのひとつひとつが、ラスト(のライブ)に向かってハーモニーを醸し出すように積み重なっていくのが、何とも楽しいのだ。
とりわけ可笑しいエピソードを挙げるなら、それまで踊りのタイミングがちっともつかめなかった彼らが、コーチの「オフサイド・トラップの要領で!」の一言でコツを飲み込むところ。
イギリスはいにしえの鉄鋼業の町シェフィールドが映画の舞台で、サッカーのチームが2つもあるという場所柄だ。カラダのすみずみまで“オフサイド”の感覚が、すっかり染みわたってしまっているのが微笑ましい。
しかし考えてみるとだ、この“オフサイド”を知っているか否かで、人生というやつも随分と変わってくるのではないか?
いや、サッカーが楽しめないとかそういうことではなくって。
「敵よりも前に出て、ボールを受け、シュートしてはいけない」
これがめちゃくちゃ要約した“オフサイド”のルールである。つまり、戦列から離れてプレーするのは卑怯者、というジェントルマンの国ならではの騎士道精神のあらわれだ。その際重要なのは、転がるボールにつれて選手は動き、また“オフサイド”のラインも常に動いている点。まさしくサッカーとはこの見えない〈オフサイド・ライン〉上にて交わされる攻防戦なのだ。
しかし攻める側はいい。この『フル・モンティ』の野郎6人のように、守勢に回ってばかりいる奴らはどうすればいいのか。
そこで“オフサイド・トラップ”である。守備陣の、意思統一により(見えない)ラインを上げ下げし、文字通り“罠”を張る。それはリスキーだが、守備陣の最強の武器でもあるのだ。
人生の攻防――すなわち人生の“オフサイド”をめぐる攻防。女の時代の裏を掻く、男性ストリップにそれを見た。
キネマ旬報1998年3月上旬号掲載記事を改訂!
サッカーが生活に入り込んでるイギリスの土地柄がよく分かります。フランスのサッカーコメディにこんな映画もありますヨ!
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