強烈な世界観を持つ1981年のフランス映画のご紹介です!
レビューをどうぞ!
アジャーニの全身女優ぶり、天晴れ!
【概要】
劇場公開後のDVDが廃盤になるとDVD中古価格が高騰しプレミア化。これを受けてデジタルニューマスター版も発売となったカルト映画。2020年1月には『ポゼッション40周年HDリマスター版』が新宿シネマカリテ他にてリバイバル上映が行われた。
男と女の愛の戦争状態を見事に具象化。イザベル・アジャーニは淫な人妻と保育園の先生、2役を演じ、カンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞した。ちなみにズラウスキー監督は、事実婚の女優ソフィー・マルソーと一男をもうけていたが、後に破局。2016年に75歳でなくなっている。
1981年 フランス・西ドイツ 監督:アンジェイ・ズラウスキー 出演:サム・ニール、イザベル・アジャーニ
【レビュー】
先の読めない映画、なんて褒め言葉がある。要するに、こちらの想像力、洞察力を超えた展開をいちいち仕掛けてくる映画。
日本では1988年に公開された『ポゼッション』は、まさしくその代名詞で、いまだに語り継がれ、熱烈なファンが絶えない。
監督はポーランド出身のアンジェイ・ズラウスキー。ほかにも『狂気の愛』『私生活のない女』といった作品で知られるが、特徴的なのは主役の女優を美しく撮る一方、必ずトンデモないシチュエーションへと引っ張り込むこと。いわば剥き出しの演技をがんがん引き出し、「次にどうなるのかが全く読めない」物語の中心へと立たせてしまうのだ。
というわけで、この『ポゼッション』の主演女優はイザベル・アジャーニ。人形のように可憐なフランスを代表するアクトレスだが、彼女のためにもインパクト大、かつ不可解極まりない数々のシーンをズラウスキー監督は、しっかり用意している。
アジャーニが扮したのは、小さな息子のいる人妻で、前半は彼女の不倫をめぐる話がメインとなる。執拗に不義を責める夫(若きサム・ニール!)。が、そのやりとりは、シュールなコントのようで、明確な意味にはまとまらない。
妻はやがて告白する。「私の中に善と悪の姉妹がいるみたい」と。そして、その姉妹が泥レスをしながら、互いに首を絞め合っていると言うのだ。妙に気の利いたセリフだけど、完全にイっちゃっている。
悪に憑依(ポゼッション)されていく彼女は、ケタケタと笑いながら地下道を歩き、突如絶叫し、壁にぶつかり痙攣しながら嘔吐。そして失禁!
さらに、不倫相手=触手のついた得体の知れぬ怪物とセックスを愉しみ、その最中を夫に見つかってしまう。一体これは何なのか? おそらく、こうだろう。悪の心と格闘するひとりの人間の自意識が、さながら人類代表のように映像化されているのだ。
つまりは、(ズラウスキー監督の深層心理を描いた)早すぎたセカイ系の映画なのであった。それにしてもアジャーニの全身女優ぶり、天晴れ。ムリとは思いつつ体当たり女優、満島ひかりでのリメイクを希望しておこう。
(轟夕起夫)
週刊SPA!2010年10月5日発売号掲載記事を改訂!
この映画、現在のところ(2020年8月現在)、動画配信サービスでラインナップされているところが見当たりません。もしラインナップされたら即観ものの希少作品! DVDならレンタルショップで探すか、もしくは宅配レンタルサービスを利用するのがよさそうです。
TSUTAYAの宅配レンタルサービスには扱いがありました。ちなみに、サービスについてはこちらで紹介しています。