アントン・イェルチンは2016年、車のトラブルによる事故により亡くなっています。
レビューをどうぞ。
楽屋に閉じ込められるドサ廻り中の貧乏パンクバンドの脱出劇
『スター・トレック』シリーズの航海士チェコフ役ほかで人気を博した若手演技派スター、アントン・イェルチンが体を張る異色スリラー。
楽屋で殺される少女の友人役、実質的なヒロインのイモージェン・プーツは、イェルチンとは高校生カップルを演じた『フライトナイト/恐怖の夜』(2011年)以来、2度目(で最後)の共演となった。
『フライトナイト/恐怖の夜』はバンパイアもののバトルアクションです。
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「扉を開ければ、死が待っている」
劇場公開時のキャッチコピーはこうだった。
タイトルの『グリーンルーム』とは音楽用語で“楽屋”を意味し、つまりは本作の主要舞台を指す。
楽屋で一体、何が起こるのか?
ドサ廻り中の貧乏パンクバンドが演奏を終え、「あとは帰るだけ」というときに、そこで殺人事件に出くわしてしまうのだ。
しかもそのヤバいライブハウスは「ネオナチ集団」の巣窟で、楽屋に閉じ込められたメンバー4人は命を狙われることになる。
『ブルー・リベンジ』(2013年)でカンヌ国際映画祭監督週間にて国際批評家連盟賞を獲得、“次の一手”が待望されていたジェレミー・ソルニエの監督作である。
『ブルー・リベンジ』は両親の仇を追うサスペンスです。
『ブルー・リベンジ』もそうだったが闘いの“素人”の修羅場を扱っており、デッドロック状態に大いに四苦八苦する姿、不器用な立ち回りから繰り出される一撃の、生々しくもヒリヒリとしたバイオレンス描写が持ち味だ。
スキンヘッドの「ネオナチ集団」を私設軍隊化しているリーダーには何と、“サー”の称号を持つパトリック・スチュワートが!
あの『X-MEN』シリーズのプロフェッサーX役で知られる名優に威嚇され、無理やり楽屋に幽閉されるものの、4人は途中からは駆け引きの末、積極的に立て籠ることを選択する。
劇中、場末のライブハウスで「ネオナチ集団」を前に西海岸ハードコア・パンクの雄、デッド・ケネディーズの名曲「ナチ・パンクス・ファック・オフ」を歌って、彼らを挑発するのだが、逆に4人は「パンクとは自分で考えるってこと」という歌詞を命がけで体現する羽目になるのだった。
このサバイバル脱出劇を特別なものにしているのは、ベーシスト役のアントン・イェルチンが主演を務めている点だろう。
昨年、27歳の若さで事故死してしまったのだ。
実力派アクターとして着実に地歩を固め、自身のバンドではギターとピアノを担当していた若き逸材……彼の勇姿がここに、永遠に刻まれている。
週刊SPA!2017年10月10、17日発売号掲載記事を改訂!