クエンティン・タランティーノの西部劇のご紹介!レビューをどうぞ。
「これはミステリー映画ではない。映画のミステリーなのである」
本国では70mmウルトラ・パナビジョン方式で上映。
音楽を担当した巨匠エンニオ・モリコーネは第88回アカデミー賞の作曲賞を受賞、劇中には(やはりモリコーネ作曲の)『遊星からの物体X』(1982年)のスコアも流れる。
主要舞台となるロッジを造った美術監督は種田陽平。タランティーノと組むのは『キル・ビルVol.1』(2002年)以来。
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単語の順序を入れ替えただけで最高のキャッチコピーになった例といえば、『爆裂都市 バースト・シティ』の「これは暴動の映画ではない。映画の暴動である」
——監督したのは(クエンティン・タランティーノもリスペクトする)石井聰亙(現・石井岳龍)だ。
と、いきなり「御託を並べた」導入にしてみたのは、そのタランティーノの得意とする作風に倣ってのこと。
デビュー作『レザボア・ドッグス』ではマドンナの名曲「ライク・ア・ヴァージン」を巡り、男たちが珍講釈を駄弁っていたが、新作『ヘイトフル・エイト』も一癖ある登場人物たちのとりとめもない“おしゃべり”で幕を開ける。
お互いに素性の知らない宝石強盗団を描く『レザボア・ドッグス』、出演は、ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、ほか。タランティーノも役者として出演しています。
馬車のなかには高額の懸賞金の掛かったお尋ね者(ジェニファー・ジェイソン・リー)と護送者(カート・ラッセル)が。
そこに賞金稼ぎ(サミュエル・L・ジャクソン)、さらには新任の保安官(ウォルトン・ゴギンズ)が乗り込み、くっちゃべりまくるのだ。
サミュエル・L・ジャクソンがグイグイとストーリーを引っ張っていきます。
ちなみにサミュエル・L・ジャクソンが堪能できる主演アクション映画『スネーク・フライト』のレビューはこちら!
やがて猛吹雪によりロッジに入ると先客4人がいた。
護送者は思う。
「コイツら含めてみんな、俺の懸賞金を狙ってるな!」
腹を探りあい、駆け引きし、殺しあう8人。嘘をついているのは……そして生き残るのは誰だ?
というわけで日本では公開時、タランティーノが仕掛ける「密室」ミステリー、というキャッチコピーが付けられたのだが、厳密には違う。
中盤からギアを入れ変え、転がる雪の玉のように“疑心暗鬼”が大きくなり、血を流さざるを得ない作劇は原点回帰、『レザボア・ドッグス』を彷彿とさせ、しかも雪+密室つながりで、なんとジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X』みたいな展開にも。
ジャンルを横断し、唯一無二の作品と化すタランティーノ映画のフシギ。冒頭の“おしゃべり”が実は、ラストの伏線になっている点にも倣って、こう締め括ろう。
「これはミステリー映画ではない。映画のミステリーなのである」と。
週刊SPA!掲載記事を改訂!
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