『パイレーツ・オブ・カリビアン』の主演、ジョニー・デップが主人公ランゴ役を、エモーション・キャプチャーで務めました。だからランゴの動きはジョニー・デップです!
マカロニ・ウエスタン愛満載の映画なので、レビューはマカロニ・ウエスタン講座みたいになってます!
『クイック&デッド』サム・ライミ、『マカロニ・ウエスタン800発の銃弾』アレックス・デ・ラ・イグレシア、『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』三池崇史…
突然調べてみたくなった。西部劇、それもマカロニ・ウエスタンというジャンルに愛着のある世代は、一体どのあたりなのかと。
ちなみに筆者は1963年生まれで、幼い頃からハリウッドの王道の西部劇はむろんのこと、イタリア製の西部劇(マカロニ・ウエスタン)も大好きで……って、そんな情報いらないですか?
では、マカロニ・ウエスタンにオマージュを捧げたことのある監督名を、作品と生まれた年代とともに挙げてみようか。
まずアメリカ。
『クイック&デッド』を発表したサム・ライミ監督(1959年生)がいる。
『クイック&デッド』は女ガンマンのシャロン・ストーンがカッコいいです。他に出演はレオナルド・ディカプリオとラッセル・クロウ、ジーン・ハックマン!
スペインには『マカロニ・ウエスタン800発の銃弾』のアレックス・デ・ラ・イグレシア(1965年生)がおり、
『マカロニ・ウエスタン800発の銃弾』は、ウエスタン村と化した撮影地を、乗っ取りから守る往年のガンマンたちをコミカルに描きます。
韓国は『グッド・バッド・ウィアード』のキム・ジウン(’64年生)。
『グッド・バッド・ウィアード』はチョン・ウソン、イ・ビョンホン、ソン・ガンホ出演。
日本だとこの人、『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』の三池崇史(1961年生)ですね。
『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』にはクエンティン・タランティーノも出演してます。他に伊藤英明、佐藤浩市、桃井かおり、堺雅人、小栗旬、石橋貴明、木村佳乃、香取慎吾など。
クエンティン・タランティーノ(1963年生)やロバート・ロドリゲス(1968年生)もそうで、これでだいたいの傾向は掴めたと思う。
そして、ここにもうひとり、刻むべき名がCGアニメーション『ランゴ』を監督したゴア・ヴァービンスキー。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでは海賊映画を現代に“再生”しているが、本作ではマジで“マカロニ・ウエスタン”ゴッコに興じている。
彼は1964年の生まれ。「なるほどね!」な世代なのであった。
このゴッコのお供をするのはジョニー・デップ(1963年生)で、彼が声をアテ、肉体を提供した主人公は、水槽育ちの元ペットのカメレオンである。
ハイウェイを走る車から投げ出され、灼熱の砂漠でサバイバル。ようやく辿り着いた町では調子こいて伝説のガンマンのフリをし、あれよあれよと場の流れで町の保安官になってしまう役柄。
撮影手法的には、実際にアクターが演じた動きや表情をそのままキャラクターに投影する技術「エモーション・キャプチャー」を採用しており、カメレオン俳優デップならではの分身キャラがハイ、一丁出来上がり。
ところで、タイトルの“ランゴ=RANGO”とは、カメレオン、いや、カメレオンマンの名前で、マカロニ・ウエスタンの傑作『続・荒野の用心棒』のガンマン“ジャンゴ=DJANGO”をもじったもの。
ちなみに『続・荒野の用心棒』の原題は『DJANGO』。この邦題はセルジオ・レオーネ監督作『荒野の用心棒』にあやかっただけで、とくに続編というわけではありません。おおらかな時代のなせる技ですかね。
ディテールを眺めれば、マカロニのみならず、さまざまな映画ネタがちりばめられている。
が、まあそこは、別に全部分からなくてもよろしい。自由に遊戯に興じ、秩序をぶち壊すカメレオンマン、ジョニー・デップの“トリックスター”ぶり、それと意外にも硬派なテーマ「真のヒーローとは何ぞや?」と問いかけてくる後半の展開を楽しめばよい。
いや。ちょっと待て。マカロニ・ウエスタンの源流のひとつ、黒澤明の『用心棒』をアレンジしたセルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演の『荒野の用心棒』ぐらいは観ておいたほうがいいかも。
よそ者=ストレンジャーが対立する2つの勢力を翻弄し、どちらもやっつけてしまうという、これもトリックスターを描いたもの。観ておけば、1960年代生まれでなくったって、絶対大丈夫!
ケトル2011年10月号掲載記事を改訂!