プロのピアニスト、ホアン・ユィシアンの実話をユィシアン自身が演じる感動作『光にふれる』

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館理人
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『光にふれる』は、本人の物語を本人が演じている映画です。

館理人
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邦画でいうと、乙武洋匡出演作『だいじょうぶ3組』ですね。

こちら、小学校で教壇に立った経験をもとにした小説「だいじょうぶ3組」の映画化でした。

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『光にふれる』はあるピアニストの物語。ではレビューをどうぞ!

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盲目のピアニストの、葛藤を超えた美しい旋律の物語は、宝箱

Photo by Wengang Zhai on Unsplash

本作は、プロのピアニストとして活躍するホアン・ユィシアンの実話を基に描かれ、ユィシアン自身が主人公を演じる。

その姿は多くの観客の笑顔と感動を呼び起こし、台湾で驚異的なヒットを記録。その感動は世界へと伝播し各国の映画祭でも次々と観客賞を受賞した。

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  先日、青山にあるワタリウム美術館に足を運んだ。取材前の下調べでもあったのだが、そこで写真家・齋藤陽道の展覧会を観た。

館理人
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注:こちらのレビューは復刻版でして、記載されているのは2014年当時の展覧会状況になります!

 一応説明しておくと齋藤は、1983年の東京生まれ。2008年頃から写真に取り組み、2010年には“キャノン写真新世紀”の優秀賞を受賞、「宝箱」と銘打たれた今回の展覧会は、彼にとって初めての大規模なイベントとなる。

 公式カタログの帯には、よしもとばなな、谷川俊太郎、坂口恭平、糸井重里の4名が。

 ちなみに齋藤は耳が聞こえない。で、障害者プロレス団体「ドッグレッグス」の一員でもある。スゴい! その写真の力もまた。ごく日常を撮っているようで、どれもがフィクションめいた“ざわめき”を有している。

 なかでも「無音楽団」と章立てられたコーナーの1枚1枚に吸い寄せられた。ピアノを弾く指の表情をとらえた、1連のショットが好きだ。齋藤にとって「音楽は永遠の片想い」だという。ふと想像した。もし彼が台湾出身の盲目のピアニスト、黄裕翔(ホアン・ユィシアン)を撮ったらどんな写真になるのだろうか、と。

 ホアン・ユィシアンは1987年生まれ。国立台湾芸術大学ピアノ科で学士を取得し(視覚障害のある学生では初)、現在はプロのピアニストとして活躍している。

 そんなユィシアン自身が主人公を演じている劇映画が『光にふれる』で、こちらも(齋藤陽道のワードを勝手に借りるなら)「宝箱」のような作品なのであった。

 音楽大学へ進学し、家族と離れ、寮での生活に挑むユィシアン。たぐい稀なるピアノの才能を持ちながら、幼い頃にコンクールで優勝したときの、「目が見えないから1位になった」との陰口がトラウマ化しており、以来ステージに立つことができなくなっている。

 そんな彼を変えていくのは、寮のルームメイト(演じるデブキャラの閃亮=シャンリャンが最高!)やダンサーを志しているヒロイン(台湾の若手女優サンドリーナ・ピンナ)。

 シンプルな成長物語だがそこは、ユィシアン本人の魅力もあいまって、ストレートに胸に響いてくる。

 監督は、これが初の長編となるチャン・ロンジー。実は本作、台北映画祭にて最優秀短編賞を受賞した『ジ・エンド・オブ・ザ・トンネル(天黒)』(2008年)がベース。

 この短編に感動したウォン・カーウァイが長編として映画化することを決め、彼の製作会社ジェット・トーン・フィルムズで企画を進めたのだった。

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チャン・ロンジー監督の近作に、島田荘司の青春ミステリー小説を映画化した『夏、19歳の肖像』があります。

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ウォン・カーウァイ監督は代表作に『花様年華』(トニー・レオン、マギー・チャン出演)など。

 視聴覚を超えた“気配”を掴みとり、それを形にしてみせるホアン・ユィシアンの演奏。

 彼は「音楽により世界のさまざまな色を感じることができる」と言う。きっと無数の眩い“光”に触れられるのだろう.。

 ハンディキャップを欠落ではなく、ひとつの現実として受け入れて、別の孔(あな)を開いていく行為。齋藤陽道の写真もそうだ“クソったれ”と叫びたくなるような現実にカメラを向け、「それでも世界は黄金色」と我らに真摯に語りかけてくる。

 もう一度、想像してみた。

 齋藤の構えるカメラの前でユィシアンが、眩い光の音色を奏でている姿を──。

轟

ケトル2014年2月号掲載記事を改訂!