1981年の映画です。
権利関係でDVD化されていなかった『カリフォルニア・ドールズ』は、2012年のニュープリント版劇場上映を経て2015年にようやくDVD化となりました。
なんと今は動画配信サービスでも観られるように!
以前は、再上映もDVD化もなく、観たくても観られなかった傑作が、今なら動画配信サービスで観られる幸せ!
『カリフォルニア・ドールズ』が2012年にようやっと再上映されたのは、渋谷のミニシアターででしたが、そのあたりの話もドラマチック。レビューにてご紹介します。
惜しくも閉館したミニシアター「シアターN渋谷」のラストムービー
シアターN渋谷という映画館が閉館する。来たる12月2日をもって。2005年12月3日オープンだから最後まで務めあげると、ちょうど7年稼働したことになる。
このレビューは2012年の記事の復刻で、閉館年に書かれた記事となります。
エクストリームなホラー映画を筆頭にカルトムービーのメッカであったが、ドキュメンタリー(特に音楽系)にも強く、はたまた、『ホテル・ルワンダ』のような硬派作から「新藤兼人監督特集」まで、雑多でクセありまくりのプログラムを組む映画館として確固たるポジションを有していた……だけに、正直とても残念だ。
『ホテル・ルワンダ』は、1994年のルワンダ虐殺状況下で、難民をかくまったホテルマンの実話を描いています。
で、そのラストムービーなのだが、これがまた凄い。ロバート・アルドリッチ監督の遺作『カリフォルニア・ドールズ』(1981年)である。しかも“ニュープリント版”を焼いての上映。
一言で記せば、巡業という名の“ドサ回り”を続けている女子プロレスラーの物語だ。名優ピーター・フォーク演ずるマネージャーに仕切られて、“カリフォルニア・ドールズ”の2人は旅をし、ファイトマネーを求めて肉弾戦に身を捧げる(日本人レスラー、ミミ萩原とジャンボ掘のタッグとの試合も!)。
一応説明しておくと、ロバート・アルドリッチ(1918〜1983)といえば、『攻撃』『何がジェーンに起こったか?』『ふるえて眠れ』『飛べ!フェニックス』『特攻大作戦』『北国の帝王』『ロンゲスト・ヤード』『合衆国最後の日』などがあり、特に数々の“男泣き”映画で知られる名匠だ。
『攻撃』は第二次世界大戦末期の物語。
『何がジェーンに起ったか?』はお互いに対しての嫉妬に囚われた姉妹を描いています。
『ふるえて眠れ』はある家に起きた過去の殺人事件をめぐるミステリー。
『飛べ!フェニックス』は、不時着した砂漠からの脱出劇。
『特攻大作戦』は戦争映画。
『北国の帝王』は、求職中の無賃乗車犯と、列車の車掌との対決。
『ロンゲスト・ヤード』は、チームを追放された元アメフト選手の刑務所内での戦い。
『合衆国最後の日』はベトナム帰還兵が国を相手に機密文書の公開を要求する社会派。
当館が開館する7年の間に、渋谷のみならず、映画館、ミニシアターを取り巻く環境は激変した。
映画業界にはデジタル化の波が押し寄せ、去る2012年9月12日にはフジフィルムが35ミリの生産中止を発表した。
各地の再開発計画が進む中で、浅草にある映画館5館すべてが10月21日に閉館。
そして名画座の砦、銀座シネパトスまでもが2013年3月には改修され、消えてしまうという。
筆者は今、かつて大塚名画座(1987年に閉館)の最後の上映作に『北国の帝王』(と、二本立てのもう1本は失念)が入っていたことを思い出している。時代は違うが、やっぱりラストムービーはアルドリッチなのか!
おんぼろキャディラックでの“ロードムービー”でもある『カリフォルニア・ドールズ』。マネージャーはカーラジオでいつもオペラを聴いている。題名は「パリアッチ」。
レオンカヴァッロが1892年に作曲したイタリアの歌劇で、旅回り一座の人生の哀歓を描いたものだが、ピーター・フォークは言う。「俺たちと同じだ。どんなに辛くても悲しくても、旅を続けなきゃならないんだ。次の町へとね」。
旅は続く。そう、次の町へと。
このご時世に“ニュープリント版”を焼くという行為の意味(メッセージ)を噛みしめつつ、アルドリッチの不屈の闘志溢れる映画、シアターN渋谷という気概に満ちた映画館と、対峙してみたい。
ケトル2012年10月号掲載記事を改訂!
『カリフォルニア・ドールズ』は、AmazonプライムビデオやU-NEXTほかで動画配信サービスの扱いがあります(2020年3月現在)