ウディ・アレン監督、kissシーンに手腕を発揮です。
どーゆーこと? 詳細は轟のレビューで!
老いてますます盛んなウディ・アレン監督。キス描写を通じて人間関係をしなやかに綴る
『それでも恋するバルセロナ』はウディ・アレンの出演はありません。『マッチポイント』もです。
こちら、ウディ・アレンは主要な役で出ています。出演は他にヒュー・ジャックマン。
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老いて、ますますエロくなったと評判のウディ・アレン監督。
無論それだけではない。どんな物語もスイスイと運ぶその筆致は健在で、本作ではさらに、軽妙な“語り口”に磨きをかけたと言ってもよい。
いや本当に、話はあってなきがごとし作品なのだ。が、にもかかわらず、バルセロナに住む女たらしの画家と元妻、アメリカからバカンスにやって来た親友同士の女性2人が織りなす“乱交状態”は、実に目に愉しい。
理由は、ゴージャスなスター競演映画ということもあるけれど、アレンの脚本と演出が、「キス」をめぐる多彩なシチュエーションを用意し、複雑な人間関係を面白おかしく描いてみせているのである。
例えば、ハビエル・バルデムとスカーレット・ヨハンソン、ヤリたいだけの画家とイケイケなアメリカ女がいい雰囲気になりキスをするものの、女のほうが突如吐き気をもよおして、あえなく中断してしまうシーン。
はたまた、エキセントリックで激情型のスペイン女、画家の元妻役ペネロペ・クルスとスカーレット・ヨハンソンがまさかのキスをするシーン。
もっと明かしてしまえば、この3人は、トリプルキスを交わす間柄になっていくのだが、セックスそのものではなく、バリエーションに富んだキス描写を通じて、ウディ・アレンはわかりやすく、かつ、しなやかに関係性を綴ることに成功している。
それにしても、他の登場人物たちもペチャクチャ喋っては、よくキスをするのだが、後半の最大の見ものは、レベッカ・ホール演ずるアメリカ女と、画家がキスした瞬間に訪れる悲喜劇。そして後日譚に入る絶妙なナレーション。最高にハマってる!
目いっぱいはしゃいでいるようで、アレンの演出はラストには不思議な寂寥感、祭りのあとの寂しさを醸し出してしまうのだから大したもの。
ともあれ、人がキスをするとき、拒絶するとき、しそうでしないとき……内面ではいろんな感情のドラマが蠢いている。そんな細かいディテールの描写に懸けたアレン翁。やるもんである。「老いてますます盛ん」とは、まさにこのことだ。
週刊SPA!2009年12月1日号掲載記事を改訂!
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