読む映画リバイバル『ドゥームズデイ』

『ニューヨーク1997』『マッドマックス2』etc. これは監督によるマジな“映画ゴッコ”である

(2010年12月29日号より)

 これはあくまで私論だが、映画監督として成功した者が一度だけやってもいい“道楽”というのがあると思う。すなわち、「自分が子供の頃に出会った大好きな作品の、影響丸出しな“映画ゴッコ”をする」こと−−−−。

 ここに紹介する『ドゥームズデイ』は、そんな微笑ましい“映画ゴッコ”をしていると思うのだが、この監督が、何を好きかはすぐわかるだろう。

 ジョン・カーペンター監督の『ニューヨーク1997』とジョージ・ミラー監督の『マッドマックス2』だ。 “読む映画リバイバル『ドゥームズデイ』” の続きを読む

読む映画リバイバイル『善き人のためのソナタ』

冷徹な旧東ドイツの“犬”=主人公を通じて、東西冷戦下の“大きな闇”を覗いてみては?

(2009年7月31日号より)

 人は、カベに穴が開いていればつい覗きたくなるもの。他人の“さま”が気になるのは、本能だからである。ではもし、その本能を国家が政治的に利用しつくしたとしたら——『善き人のためのソナタ』の舞台背景は、そういう世界だ。

 1984年、東西冷戦下のベルリン。悪名高き旧東ドイツの国家保安省は訊問や監視を通じて、危険分子を見つけだし、そればかりか一般市民のあいだでも、家族や友人のことを密告する“公式協力者”が日々生み出されていた。 “読む映画リバイバイル『善き人のためのソナタ』” の続きを読む

読む映画リバイバル『のんちゃんのり弁当』

「頑張れアラサー女子」映画かと思いきや、随所に職人芸が光る“絶品料理”だった

(2010年2月16日号より)

 美人を逆境に置くと映画が面白くなる——という定理を証明した本作。“のんちゃん”とは主演の小西真奈美のことではない。彼女は永井小巻、31歳。ダメ亭主(岡田義徳)に愛想を尽かし、幼稚園児のひとり娘(←こっちが、のんちゃん)を連れて、実家に戻ってくる。

 実に、単刀直入な導入部だ。

 小巻は東京・下町生まれ。快活で、ポジティブ。さっそく自立しようと仕事を探すのだが、しかーし。これまでなんにも考えずに生きてきた彼女は空回りしてばかり。そりゃあそうだ。甘い。甘すぎるのである! “読む映画リバイバル『のんちゃんのり弁当』” の続きを読む

読む映画リバイバル『怪奇!! 幽霊スナック殴り込み!』

闇の中から“男のエンタメ”は生まれる。デタラメにおもしろい杉作J太郎監督作

(2006年12月5日号より)

 風で揺れる男のネクタイ。もうひとり、スナイパーはスコープ付きライフルを構えている。狙いはヒロイン、スナックのママ(タナダユキ)か、刑務所帰りのその夫(みうらじゅん)か。そこに着流し姿の渡世人が登場。日本刀を振り下ろし、スパッと斬られた男の揺れるネクタイがカットイン。カッコいい。監督は誰だ? 何と杉作J太郎だ! “読む映画リバイバル『怪奇!! 幽霊スナック殴り込み!』” の続きを読む

読む映画リバイバル『空気人形』

“代用品”ではない人生を求めた人形に共感するか、はたまたペ・ドゥナの裸に興奮するか

(2010年3月30日号より)

 この映画ってある種、“踏み絵”みたいな使い方ができると思う。というのも、観終えてからの感想によって、その人の現在の「幸福度」がざっくり、測れてしまうのだ。

 さて、どんな物語か? 荒唐無稽なお話である。主人公はラブドール。安物の性欲処理人形が突如“心”を授かって、持ち主(板尾創路)に隠れて家を抜け出すという展開。そしてさまざまな人々に出会い、レンタルビデオ店で働く青年(ARATA)に空気人形は恋をしてしまう——。 “読む映画リバイバル『空気人形』” の続きを読む

読む映画リバイバル『太陽の傷』

三池崇史、哀川翔よりもバイオレンスなのは、少年法に守られた殺人犯である

(2007年1月23日号より)

 早くも話題沸騰、三池崇史監督の07年の新作『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(秋公開)。豪華キャストで全編英語ゼリフ、奇想天外、源氏vs平家のバトルを描く西部劇だとか。天下の鬼才ならではの賑々しさだが、さて昨年、三池作品にしては意外にも、ひっそりと劇場公開された映画があった。それがこの『太陽の傷』である。主役は哀川翔アニキ。 “読む映画リバイバル『太陽の傷』” の続きを読む

読む映画リバイバル『ワイルド・バレット』

全編トップスピード! 童話的、ダークな雰囲気を湛えた傑作アクション

(2009年4月7日号より)

 上半身、腹のあたりを真っ赤に血で染めた少年が、男に抱きかかえられ、オープンカーの助手席に放り込まれる。一体どうしたのか、その状況を理解するヒマも与えられぬまま、本作は、車の発進と同時にいきなりトップスピードで走り出す。 “読む映画リバイバル『ワイルド・バレット』” の続きを読む

読む映画リバイバル『チェンジリング』

衰え知らず、イーストウッドの監督手腕。息子に“取り憑かれた”母が辿った悲劇の実話

(2009年7月21日号より)

 “生きる伝説”クリント・イーストウッド。嬉しいことに俳優としても監督としても、いまだ我々を驚愕させ続けているわけだが、アンジェリーナ・ジョリーを主演に迎えた監督作『チェンジリング』も素晴らしかった。またもやイーストウッドの至芸に感服である。 “読む映画リバイバル『チェンジリング』” の続きを読む

読む映画リバイバル『誰がため』

際限なき疑心暗鬼……誰が敵で味方なのか? 反ナチス抵抗組織の青年2人が見た悪夢

(2010年6月29日号より)

 暗闇に、男の声が響く。「奴らを覚えてるか?」「4月9日のことだ」。そうしてこの戦争大河ドラマ、デンマークの秘史を描いた『誰がため』はおもむろに始まる。

 4月9日とは1940年、ドイツ軍に進攻され、デンマークが占領された日。画面には、ナチス・ドイツが首都コペンハーゲンを侵攻するニュース映像が映しだされ、さらに男のナレーションがかぶさっていく。 “読む映画リバイバル『誰がため』” の続きを読む

読む映画リバイバル『それでも恋するバルセロナ』

老いてますます盛んなウディ・アレン監督。キス描写を通じて人間関係をしなやかに綴る

(2009年12月1日号より)

 老いて、ますますエロくなったと評判のウディ・アレン監督。無論それだけではない。どんな物語もスイスイと運ぶその筆致は健在で、本作ではさらに、軽妙な“語り口”に磨きをかけたと言ってもよい。 “読む映画リバイバル『それでも恋するバルセロナ』” の続きを読む

読む映画リバイバル『サムサッカー 17歳、フツーに心配な僕のミライ』

『オーラの泉』よりも心に染みる!? マイク・ミルズ監督の優しいメッセージ

(2007年2月6日号より)

 その業績は、記し始めたら何ページも費やすことになるだろう。偉才マイク・ミルズ。人気ブランド「X-girl」のロゴや、ビースティ・ボーイズ、ソニック・ユースのCDジャケ、ミュージッククリップにCM(GAPのミュージカル風のやつ)などなど、グラフィックデザイナー、映像作家として幅広く活躍してきたアーティストだ。 “読む映画リバイバル『サムサッカー 17歳、フツーに心配な僕のミライ』” の続きを読む

読む映画リバイバイル『その土曜日、7時58分』

安っぽい犯罪劇を重厚に描く……これが名匠シドニー・ルメットの手腕なり!

(2009年7月7日号より)

 安い犯罪。安い人間たちが起こしちまった激安な犯罪。今回ご紹介する映画『その土曜日、7時58分』を端的にまとめればこうなるわけだが、ここで強調すべきは作品自体は全く「安くはない」ということ。むしろ重厚。しかも一度観始めたら、最後まで心を持っていかれてしまうはず。なぜそうなるのか。 “読む映画リバイバイル『その土曜日、7時58分』” の続きを読む

読む映画リバイバル『アメリカン・ティーン』

高校生のリアルに迫るドキュメント……のはずが、ドキュメントっぽくないのはなぜ?

(2009年3月17日号より)

 近年、映画やTVドラマはリアリティを求め、その方法論としてよくドキュメンタリー・タッチを導入する。ナマっぽい映像と臨場感あふれる編集の合わせワザ。これは簡単そうで、作り手のセンスが如実に出てしまう手法なわけだが、逆の発想もまたあり。 “読む映画リバイバル『アメリカン・ティーン』” の続きを読む

読む映画リバイバル『パンドラの匣』

実に眼福! 色香を無意識に競っている(!?)仲里依紗と川上未映子の演技に首ったけ

(2010年8月10日号より)

 仲里依紗vs.川上未映子。こんなナイスなカードの対決が、映画の中で行われていたのをご存知か。タイトルは『パンドラの匣』。ちょうど昨年、生誕百年を迎えた太宰治の小説が原作だ。戦後すぐ、山中の結核療養所が舞台になっているのだが、これが何ともノホホンと奇妙に明るいトーンの物語で、太宰文学を語る上では異色の作とされている。 “読む映画リバイバル『パンドラの匣』” の続きを読む

読む映画リバイバル『接吻』

不敵な笑みを浮かべ、奇行を繰り返す女優・小池栄子、天晴である

(2009年3月3日号より)

 皆さんは、小池栄子という名前を耳にして何を思い浮かべるだろうか? 巨乳の元グラビアアイドル。総合格闘家・坂田亘の奥さん。バラエティやトーク番組などで仕切りのうまい、頭の回転が速いタレント……ふむふむ。どれも納得の答え。

 だが、 “読む映画リバイバル『接吻』” の続きを読む

読む映画リバイバル『敬愛なるベートーヴェン』

傲慢で粗野でお下劣、でも楽聖……。浮かび上がるベートーヴェン

(2007年11月13日号より)

 こりゃまた大胆なアイディアを採用したものである。孤高の天才音楽家べートーヴェン(名優エド・ハリス)の晩年に突如登場した若き女性。その名はアンナ(扮するダイアン・クルーガーがエロい!)。彼女はコピスト(写譜師)として雇われる。折しも、 “読む映画リバイバル『敬愛なるベートーヴェン』” の続きを読む

読む映画リバイバル『純喫茶磯辺』

イタくも愛すべきダメ人間が集う喫茶店……架空であっても、思い出に残る名店だ

(2009年2月17日号より)

 もし、自分の身の周りに本当にいたら、「イタすぎるキャラクター」でしかないのに、映画の中では「愛すべきダメジン」に見えてしまう不思議。本作『純喫茶磯辺』に登場するのは、まさにそんな人々ばかり。さっそく紹介しよう。まずは宮迫博之が演じる “読む映画リバイバル『純喫茶磯辺』” の続きを読む

読む映画リバイバル『トゥモロー・ワールド』

驚異の長回し&絶妙な音楽使いが抜群。邦題のイマイチさが嘆かれる傑作だ

(2007年3月20日号より)

 元ジャーナリストで今は隠遁家、ヒッピー崩れの長老(マイケル・ケイン)が愛聴していたのはストーンズのカバー、イタリアの鬼才フランコ・バッティアートによる「ルビー・チューズデイ」である。

 一体、だしぬけに何だ!? と思われるかもしれないが、すでに本作を観た方ならこれだけで脳内プロジェクターが動きだすはず。 “読む映画リバイバル『トゥモロー・ワールド』” の続きを読む

読む映画リバイバル『サンキュー・スモーキング』

主人公は、植木等の当たり役“無責任男”のUSA版。でも内容は、実に硬派だった

(2007年9月18日号より)

 どこの世界にも“弁の立つヤツ”はいる。本作の主人公の肩書きは、タバコ研究アカデミー広報部長。すなわちタバコ業界のスポークスマンで、その巧みな話術、ディベート術で世間をスイスイスーダラダッタと泳いでいく(アーロン・エッカート、好演!)。まるで植木等の当たり役、“無責任男”のUSA版みたいだが、 “読む映画リバイバル『サンキュー・スモーキング』” の続きを読む

読む映画リバイバル『妄想少女オタク系』

恋をした相手が腐女子だったら……? 萌えながら楽しむラブコメの新しいカタチ

(2008年4月22日号より)

 こういう青春ドラマの主人公が登場しても、何らフシギではない時代である。すなわち、“攻め”の反対語とは何か? と質問されて、本作のヒロインは平然とこう答えるのだ。「“受け”でしょ」と。“守り”ではなくて“受け”。BL(ボーイズラブ)において、 “読む映画リバイバル『妄想少女オタク系』” の続きを読む