古巣日活映画ゆかりの面々に囲まれての、現代的再生
好きな小百合映画は1960年代の日活時代に集中している。完成度が断然高いのだ。
だがここは目先を変え、あえて近年の作品から選んでみたい。
出演は吉永小百合をはじめ、津川雅彦、風間杜夫、他。1994年の作品で、原稿の初出は2005年です。
すると浮上してくるのが「あなたのシワを撮りたい」との大林宣彦監督のラブコールに応え、吉永小百合がノーメイクに近いナチュラルメイクで挑んだ『女ざかり』。
あの傑作『理由』(2004年)を生んだプレ映画と捉えると、テーマ性も含め、公開当時よりも広く受け入れられるのではないか。
振り返れば『女ざかり』は、丸谷才一のベストセラー小説を映像化する試みであるのと同時に、大林監督の日活映画のリ・イマジネーションであった。
短いカットつなぎによるハイテンポは、早口でまくしたてる日活映画(特に中平康監督作品)の専売特許でもあったはずだ。また、底流にセックスのモチーフが横たわっている点も。
三國連太郎、山崎努、津川雅彦といった豪華客演、さらに水の江瀧子、宍戸錠、白木万理、月丘夢路といった古巣ゆかりの面々にも囲まれて、吉永小百合は日活映画の現代的再生を生きてみせた。
その“現代的再生”とはすなわち、彼女が年齢を重ねて働く女を極め、しかも欲望に忠実な“食べる女”であるということ(劇中、実にさまざまなものを口にする!)。
役柄はこうである。新聞社の家庭部副部長から論説委員に移るも、最初に書いた一文が政府与党と密接な宗教団体を刺激し、不当に異動させられそうになる。論説委員=小百合は、男たちに向かって真っ直ぐな言葉をぶつける。しかし魑魅魍魎が跋扈するドロドロとした現実の中で、言葉は宙に浮く。それを遮二無二、行動で突破しようとするのが日活映画の伝統だ――。
『理由』を締め括ったルポライター役、吉永小百合が演じたら、さぞ面白かったろうなあ。
キネマ旬報2005年2月上旬号掲載記事を改訂!
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